一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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地域歯科医療部門

2024年6月29日(土) 13:10 〜 14:10 ポスター会場 (大ホールC)

[優秀P地域-01] 急性期高齢者肺炎患者の転帰と歯科介入に関する後ろ向き調査

○大井 孝1,2、菊地 真友3、服部 佳功2、山口 哲史2、田中 恭恵2、猪狩 洋平2、小宮山 貴将2、伊藤 佳彦2、小林 誠一4、矢内 勝4 (1. 石巻赤十字病院 歯科、2. 東北大学大学院歯学研究科加齢歯科学分野、3. 石巻赤十字病院 歯科衛生課、4. 石巻赤十字病院 呼吸器内科)

【目的】
 宮城県石巻では2017年に石巻赤十字病院を中心とした5つの医療機関で「石巻地域肺炎ネットワーク」を設立し,①肺炎治療とケアの標準化と施設間の連続性の確立,②医療・介護関係者への肺炎予防の教育・研修,③肺炎に対する患者・市民への啓発を目的に活動している。また本ネットワークでは入院患者を登録し,データ収集・予後調査をすることで肺炎治療・ケアの質の向上を目指している。本研究では石巻地域肺炎ネットワークに登録された急性期高齢者肺炎患者の入院後の転帰,入院中の歯科介入状況と両者の関連について後方視的に調査し,今後の課題について検討した。
【方法】
 調査対象は,石巻赤十字病院に肺炎の診断で入院した患者のうち,本ネットワークの理念と目的を理解し,患者登録ヘの同意を得られた65歳以上の高齢患者とした。対象期間は2017年11月1日~2023年11月30日とし,患者情報は診療録から抽出した。本研究は石巻赤十字病院倫理委員会の承認を得て実施した(石巻赤十字病院倫理委員会承認番号17-23)。
【結果と考察】
 登録患者は1,376名(平均年齢82.4歳,男性69.1%),入院日数の中央値は16 日(四分位区間:10-25)であった。転帰は自宅退院,施設退院,他の医療機関への転院,死亡退院がそれぞれ46.9%,6.5%,33.1%,13.5%だった。全登録患者の20.7%が入院中に歯科を受診した。介入内容は齲蝕治療,歯周疾患治療,抜歯,義歯治療,粘膜疾患への対応など多岐に渡り,介入回数の中央値は3回(四分位区間:2-5)であった。歯科介入の有無と転帰との関連を検討したところ,介入ありの患者は介入なしの患者よりも僅かに自宅退院が多く,死亡退院が少ない傾向を示したが,統計学的には有意でなかった。自宅退院の場合は,退院後も必要に応じ外来にて治療を継続するか,地域の歯科医療機関に治療を引き継ぐことができたが,施設退院や転院の場合の多くは治療・ケアを継続することができなかった。限られたリソースの中で,いかに急性期肺炎患者へ効果的に介入するかを明らかにすること,どのような退院・転院先でも治療の連続性を担保する体制の構築が今後の課題と考えられた。
(COI開示:なし)