一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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地域歯科医療部門

2024年6月29日(土) 13:10 〜 14:10 ポスター会場 (大ホールC)

[優秀P地域-04] 客観的咀嚼能力の変化様式と健康寿命の関係
島根県歯科医師会-島根大学共同研究“LEDO Study”

○清水 潤1、富永 一道1,2、矢野 彰三2、齋藤 寿章1、前田 憲邦1、井上 幸夫1 (1. 島根県歯科医師会、2. 島根大学地域包括ケア教育研究センター(CoHRE))

【目的】
 咀嚼能力は歯数の減少により低下し,歯科治療により改善し得る変数である。にもかかわらず,高齢者の咀嚼能力の変化様式と健康寿命の関係については十分に調べられていない。そこで,これらの関係を明らかにする目的で島根大学との共同研究LEDO Studyを行った。
【方法】
 島根県後期高齢者医療広域連合よりH28年より6年間の後期高齢者歯科口腔健診(LEDO)データと医療介護保険情報の提供を受けた。健康寿命阻害イベントを自立喪失(要介護2以上認定または認定前の死亡の発生)とした。H28年LEDO健診日よりR4年3月31日を観察期間とした。H28年とH29年の両LEDO健診受診者からなるデータセットを構築した。“ファイン組Ⓡ”を15秒間努力咀嚼した後の分割数を客観的咀嚼能力(gumi15)とし中央値で2分し“高咀嚼“”低咀嚼“として,変化様式を以下の4群「①28高_29高,②高_低,③低_低,④低_高」とした。自立喪失の発生と4群の関係をKaplan-Meier法,Cox比例ハザードモデル(共変量;年齢,性,BMI)を用いて調べた。歯科治療介入の指標として未処置歯数を用いた。
【結果と考察】
 観察終了までの自立喪失発生は473/3169名(14.9%) Incidence Rate(1000person month)2.4だった。咀嚼の変化様式4群の属性および自立喪失発生状況は「①女性56.8%,年齢78.2±2.3歳,自立喪失157/1399名(11.2%),IR 1.8,②49.1,78.5±2.4,38/271(14.0),2.2,③57.8,78.9±2.3,230/1160(19.8),3.2,④56.6,78.5±2.3,48/339(14.2),2.2」だった。Cox比例ハザード分析結果は「①Haz. 0.58 95%CI 0.47-0.71 p<0.001 ②0.69 0.49-0.98 p=0.036 ③1.00 ref ④0.71 0.52-0.97 p=0.030」だった。Kaplan-Meier法にても視覚的に確認された。未処置歯数は①と④で有意に減少していた。低咀嚼群に対して歯科治療介入して客観的咀嚼能力を改善し維持管理することは高齢者の健康寿命延伸に貢献することが示唆された。
(COI開示:なし)
(島根大学倫理委員会承認番号20220723-1)