[優秀P一般-01] 介護施設入所者における認知機能の低下が咀嚼中の下顎運動に及ぼす影響
【目的】
咀嚼機能と認知機能が関連することは,これまでに多くの研究で報告されている。しかし,咀嚼中の下顎の動きが認知症の進行に伴い,どのように変化するかは明らかではない。本研究では,介護施設入所者の咀嚼中の下顎運動を解析し,認知機能の低下との関連性について検討したので報告する。
【方法】
千葉県の介護老人保健施設と東京都の介護老人福祉施設に入所中の要介護高齢者のうち,固形食を摂取している63名(平均年齢88.1歳,男性15名,女性48名)を対象とした。調査項目は年齢,性別,要介護度,体格指数(BMI),MNA-SF,骨格筋量指数(SMI),Eichnerの分類,ABC認知症スケールとした。また,煎餅を咀嚼した際の咀嚼開始から一回目の嚥下までの時間,総サイクル数,サイクル頻度,総変化量,平均速度,咀嚼サイクルパターンを直線運動と回転運動に分けたときの各回数と回転運動頻度を運動学的に解析し,その解析結果と各調査項目との相関関係を調べた。つぎに,解析結果とABC認知症スケールとの関連性を検討するため,有意な相関関係にあった項目の影響を調整した偏相関係数を算出した。さらに,ABC認知症スケールから被験者を正常または軽度の認知機能低下群(軽度群),中等度認知機能低下群(中等度群),重度の認知機能低下群(重度群)の3群に分け,解析結果を群間比較した。有意水準は5%とした。
【結果と考察】
SMI,Eichnerの分類,およびMNA-SFを調整した後でも,直線運動回数,回転運動回数,回転運動頻度はABC 認知症スケールと有意な関連性を示した。また,重度群は軽度群に比べてサイクル頻度,回転運動数,回転運動頻度が有意に少なく,直線運動数が有意に多かった。
以上の結果により,認知機能の低下に伴い,咀嚼中の下顎運動は回転運動が減少し,直線運動が増加することが示唆された。また,重度の認知症患者では食塊形成が困難になっている可能性があるため,提供している食事形態が患者に適しているか否かを確認する必要があると考えられた。
(COI開示:なし)
(日本大学歯学部 倫理審査委員会承認番号 EP19D015-1)
咀嚼機能と認知機能が関連することは,これまでに多くの研究で報告されている。しかし,咀嚼中の下顎の動きが認知症の進行に伴い,どのように変化するかは明らかではない。本研究では,介護施設入所者の咀嚼中の下顎運動を解析し,認知機能の低下との関連性について検討したので報告する。
【方法】
千葉県の介護老人保健施設と東京都の介護老人福祉施設に入所中の要介護高齢者のうち,固形食を摂取している63名(平均年齢88.1歳,男性15名,女性48名)を対象とした。調査項目は年齢,性別,要介護度,体格指数(BMI),MNA-SF,骨格筋量指数(SMI),Eichnerの分類,ABC認知症スケールとした。また,煎餅を咀嚼した際の咀嚼開始から一回目の嚥下までの時間,総サイクル数,サイクル頻度,総変化量,平均速度,咀嚼サイクルパターンを直線運動と回転運動に分けたときの各回数と回転運動頻度を運動学的に解析し,その解析結果と各調査項目との相関関係を調べた。つぎに,解析結果とABC認知症スケールとの関連性を検討するため,有意な相関関係にあった項目の影響を調整した偏相関係数を算出した。さらに,ABC認知症スケールから被験者を正常または軽度の認知機能低下群(軽度群),中等度認知機能低下群(中等度群),重度の認知機能低下群(重度群)の3群に分け,解析結果を群間比較した。有意水準は5%とした。
【結果と考察】
SMI,Eichnerの分類,およびMNA-SFを調整した後でも,直線運動回数,回転運動回数,回転運動頻度はABC 認知症スケールと有意な関連性を示した。また,重度群は軽度群に比べてサイクル頻度,回転運動数,回転運動頻度が有意に少なく,直線運動数が有意に多かった。
以上の結果により,認知機能の低下に伴い,咀嚼中の下顎運動は回転運動が減少し,直線運動が増加することが示唆された。また,重度の認知症患者では食塊形成が困難になっている可能性があるため,提供している食事形態が患者に適しているか否かを確認する必要があると考えられた。
(COI開示:なし)
(日本大学歯学部 倫理審査委員会承認番号 EP19D015-1)