一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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優秀ポスターコンペティション

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一般部門

2024年6月29日(土) 13:10 〜 14:10 ポスター会場 (大ホールC)

[優秀P一般-02] オーラルフレイル新5項目(OF-5)で評価したオーラルフレイルと抑うつ傾向発症との関連:柏スタディ

○楠本 奈央1、永谷 美幸1、溝口 奈菜1、田子森 順子1,2、池田 健太郎1、前田 真理子1、田中 友規2、孫 輔卿2,3、呂 偉達2、飯島 勝矢2,3 (1. サンスター株式会社、2. 東京大学高齢社会総合研究機構、3. 東京大学未来ビジョン研究センター)

【目的】
 高齢者は,生活環境や身体機能の変化によりメンタルヘルスの不調をきたしやすい。抑うつ傾向は日常生活だけでなく,認知症発症や要介護新規認定,死亡の高いリスクと関連することが報告されており,早期予防が望まれる。抑うつ傾向の関連因子として,口腔機能や歯数に加えて,これらの軽微な衰えが重複した「オーラルフレイル(OF)」も横断研究から報告されている。本研究では,自立/要支援の地域高齢者のOFが抑うつ傾向発症を予測し得るかを明らかにするとともに,歯科医療専門職が不在でも評価可能なOral frailty 5-item Checklist(OF-5)で評価したOFが将来の抑うつ傾向発症予測にも有用か検証することを目的とする。
【方法】
 対象は千葉県柏市在住65歳以上高齢者に対するコホート研究(柏スタディ)の参加者とした。除外基準は追跡調査欠席者,2012年調査開始時点で抑うつ傾向,主要変数欠損者とし,開始時点の口腔関連指標,OF及び年齢等の交絡可能性のある要因を評価した。抑うつ傾向はGDS-15(老年期うつ病評価尺度)の6点以上と定義し,2018年までに計4回の追跡調査により最大6年間追跡した。統計解析にはSPSS ver.29(IBM社)を使用し,Cox比例ハザードモデルを主に用いた(有意水準は5%未満で有意)。
【結果と考察】
 解析対象者1,356名(平均年齢72.6±5.3歳;男性51%)の内,245名(18%)が新たなに抑うつ傾向に該当した。発症者は非発症者と比較して有意に高齢で教育年数が短く,糖尿病の既往歴が多かったが,残存歯数では有意な差は見られなかった。調査開始時OF非該当者(全体の65%)と比較すると,OF該当者(35%)では抑うつ傾向の新規発症率が有意に高かった(調整ハザード比1.53,95%信頼区間1.15-2.04)。本研究により,OF該当者は将来の抑うつ傾向新規発症率が高いことと,OF-5がその予測に有用であることが明らかとなった。これは口腔機能低下と精神状態との関連性を示唆する結果であり,OFの早期からの対策が,抑うつ傾向発症予防に資する可能性がある。
(COI開示:なし)
(東京大学 倫理審査専門委員会承認番号 21-192)