The 35th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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優秀ポスターコンペティション

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一般部門

Sat. Jun 29, 2024 1:10 PM - 2:10 PM ポスター会場 (大ホールC)

[優秀P一般-03] 地域ぐるみの多面的なフレイル予防啓発介入
-オーラルフレイル認知への影響と口腔保健行動変容との関連-

○田子森 順子1,2、田中 友規1、佐藤 麻美3、澁谷 奈菜子3、永谷 美幸2、池田 健太郎2、溝口 奈菜2、楠本 奈央2、前田 真理子2、飯島 勝矢1,4 (1. 東京大学 高齢社会総合研究機構、2. サンスター株式会社、3. 神奈川県平塚市役所、4. 東京大学 未来ビジョン研究センター)

【目的】
 オーラルフレイル(以下、OF)は口腔機能の軽微な衰えが重複した状態であり、全身のフレイルや生活機能障害、死亡等の転帰につながるため、早期からの日常生活行動による予防が重要視される。したがって、自身のOFに気づき、口腔機能を維持・向上するための習慣を持つ必要があるが、OFは広く一般に認知されているとは言い難い。本研究の目的は、産官学民協働による特定地域へのOF予防啓発介入が、住民のOFの認知度向上、予防意識や口腔行動変容と関連するかを明らかにすることである。
【方法】
 対象は神奈川県平塚市在住の40歳以上中高齢者から、啓発介入期間前後の質問票調査に回答した2,346名の内、啓発介入時点でOFを認知していない者である。データ欠損は解析毎に除外した。特定介入地域では、産官学民協働でのフレイル予防講座(カムカム教室お口元気プラス)の集中的開催、地域の歯科医師による講座、地域イベントでの展示、ポスター掲示・リーフレット配布(公共施設、医療機関、商業施設等)等を行った(実施時期2023年2月~9月)。 OFの認知理解、口腔保健行動の実施状況は介入実施前後で同様の質問項目への回答変化により評価した。統計処理は主にカイ二乗検定や二項ロジスティク回帰分析を用い、有意確率5%未満をもって有意とした。
【結果と考察】
 介入前調査時点でOFを認知していない1,011名(平均67.2±13.2歳、女性 42.5%)の内、452名(44.7%)が介入後にOFという言葉を認知し、272名(26.9%)は内容まで理解していた。介入後にOFを新たに認知した者は、OF予防に対する意識が高まり{性・年齢調整オッズ比(95%信頼区間)=9.283.30-26.11)}、噛み応えを意識した食事や歯科健診受診、歯間清掃具や口腔用液体製剤の使用を介入後に新たに開始した者が有意に多かった。一方、唾液腺マッサージや口腔体操の実施には有意な関連がみられなかった。本結果より、地域への多面的な啓発介入がOFの認知や予防意識の向上に寄与することがわかった。さらに、口腔保健行動変容を後押しする可能性が示唆された。今回のような啓発を産官学民協働を軸とした地域ぐるみでの多面的なアプローチで取り組むことが、OF予防に寄与することが期待される。
(COI 開示:サンスター株式会社)
(東京大学 倫理審査委員会承認番号 22-443)