一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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ランチョンセミナー2
回復期等口腔機能管理って何?-歯科のできることとは-

2024年6月29日(土) 12:00 〜 13:00 第2会場 (特別会議場)

座長:菊谷 武(日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック)

共催:イーエヌ大塚製薬株式会社/株式会社大塚製薬工場

[LS2] 回復期等口腔機能管理って何?-歯科のできることとは-

○大野 友久1,2 (1. 浜松市リハビリテーション病院 歯科 、2. 陵北病院 歯科)

【略歴】
1998年 東京医科歯科大学 歯学部 卒業
2001年 聖隷三方原病院 リハビリテーション科
2002年 東京医科歯科大学 大学院 卒業
2015年 国立長寿医療研究センター
2019年 浜松市リハビリテーション病院 歯科 部長
2024年 陵北病院 歯科

日本老年歯科医学会 理事・指導医・専門医・摂食機能療法専門歯科医師
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 代議員・認定士
【抄録(Abstract)】
回復期、この言葉を正確に理解できている歯科医療従事者はどのくらいいるだろうか?脳卒中などの重篤な疾患に罹患すると、症状や障害の程度にもよるが、患者は急性期病院に入院し、回復期を経て、自宅あるいは施設などで維持期・慢性期(生活期)の地域での生活に戻り、その後人生の最終段階である終末期(エンドオブライフ)に至る。急性期を担う病院は2次医療機関としての役割を持つ病院が多く、歯科口腔外科の関与も多い。さらに周術期等口腔機能管理の導入以来、急性期患者に対する口腔管理が実施されるようになってきている。また維持期・慢性期は、在宅や施設における歯科訪問診療の発展してきている。しかし、その狭間の回復期は歯科医療従事者にとって認識が薄く、維持期・慢性期と混ざって認識している者も見受けられる。
回復期とはその名の通り、疾患に罹患したあとの体が回復する過程である。最も回復するこの時期に適切な医療が提供されないと回復が最大化されず、その後の生活に支障をきたす。回復期では主にリハビリテーションが実施され、身体機能等の回復を最大化し、生活を再建するための準備を行う。それが地域や施設などの生活の場、すなわち維持期・慢性期につながっている。この時期に口腔の状態が不良であると、効率の良い栄養摂取にも限界が生じる。急性期を経て口腔内状況が悪化してしまう場合もあるが、重篤な疾患の多くは生活習慣病と関連があり、生活習慣病には歯周疾患も関連しているといわれており、かかりつけ歯科をもっておらず元来より口腔内状況が不良な者も多い。
回復期において歯科は重要な役割を担うことができる。急性期で管理された口腔を引き継いで回復期においても歯科が適切に管理すること、あるいは急性期で悪化してしまった口腔内を回復期で再建することは、リハビリテーションの円滑な実施や栄養摂取状況の改善、誤嚥性肺炎の予防などに必要である。さらに、その後に続く自宅退院後の地域医療、あるいは維持期・慢性期の施設に適切に引き継ぐことも回復期の歯科の重要な役割である。またそれらの患者は、歯科処置実施時のリスクがやや高いため、地域歯科診療所では対応困難な場合も多い。そこで比較的時間が確保できる回復期入院中に、病院内の歯科が可能な限り歯科治療を行って口腔環境を整えておき「管理しやすい口腔にして地域に送り出す」ことは、地域包括ケアの観点からも重要と考える。
2024年度の診療報酬改定で回復期等口腔機能管理が導入された。これはこの重要性を厚生労働省が理解しているからであろう。当科では回復期病院の入院患者に対する口腔ケアおよび歯科治療、看護師、言語聴覚士、作業療法士等の院内他職種との密な連携、摂食嚥下障害への対応に加え、退院時の地域歯科医師会との連携システム構築などを実施している。当日は事例を通して、回復期に関わる歯科、病院歯科が果たすべき役割について述べたい。