一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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ランチョンセミナー3
口腔健康管理における義歯管理 -義歯安定剤と義歯洗浄剤-

2024年6月29日(土) 12:00 〜 13:00 第3会場 (中ホール)

座長:河相 安彦(日本大学松戸歯学部有床義歯補綴学講座)

共催:グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパン株式会社

[LS3] 口腔健康管理における義歯管理 -義歯安定剤と義歯洗浄剤-

○西 恭宏1 (1. 鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科 口腔顎顔面補綴学分野)

【略歴】
1986年 徳島大学歯学部歯学科 卒業
1986年 鹿児島大学歯学部附属病院第2補綴科 助手
2002年 鹿児島大学大学院歯学研究科 博士(歯学)
2003年 鹿児島大学医学部・歯学部附属病院 義歯補綴科 講師
2008年 鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科 口腔顎顔面補綴学分野 准教授
    現在に至る

【資格】
日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)認定歯科医
日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士
日本補綴歯科学会専門医・指導医
日本老年歯科医学会専門医・指導医
【抄録(Abstract)】
 高齢者において多くの歯が残るようになってきたが,令和4年度の歯科疾患実態調査では有床義歯を装着する高齢者は65歳で約20%,75歳以上では40%以上存在するようである。つまり,現在でも有床義歯補綴はまだまだ必要とされる状態にあり,有床義歯製作とその管理は高頻度歯科治療の1つである。しかし,後期高齢者の歯科受療率の低さもあいまって,有床義歯患者の経過観察は十分行われていないと感じている。歯周病管理は根づいてきていると思われるので,口腔健康管理の一環として有床義歯の管理も同様に行われていくことを期待している。
 有床義歯の管理には,義歯の咬合,適合の評価に加え,機能状態の把握も必要であり,その評価と診断に対応した義歯の調整や咬合面再形成,リラインなどの処置を行うことも含まれ,これらは口腔機能管理に含まれる。これらの処置をもってしても機能に限界ある場合には,義歯安定剤の使用を指導する必要がある状況となり得る。私自身,大学病院で補綴歯科治療に長年携わっているが,口腔腫瘍切除後の顎補綴の患者を多く経験してきて,義歯の安定要因である人工歯の排列位置や咬合様式,支台装置を考慮して整えても,患者自身の顎欠損状態や上下顎堤の対向関係によって義歯安定剤に真剣に頼らざる負えない状況があり,その使用指導をする機会が増えている。しかしながら,患者によっては義歯安定剤の受け入れ方が異なるのも現状である。義歯安定剤については,今回,私自身が義歯に対して維持・安定をどのように考えて義歯安定剤を用いているかを整理し,多施設臨床研究における義歯安定剤の研究結果についても示す。
 衛生面(感染対策)からの有床義歯の管理については以前から多く報告され,デンチャープラークコントロールという用語が使われる様になって久しく,義歯の衛生管理には十分注力されてきているように思われるが,明確で実用的なガイドラインが存在するかというと十分なものは存在しない。2011年にADAから発表された「総義歯のケアとメンテナンスのエビデンスベースドガイドライン」において,効果的な義歯洗浄剤を用いて毎日清掃するべきことが記載されたが,毎日清掃することの根拠となる研究はないままであった。その後,基礎研究と臨床研究においてポピュラーな過酸化物系義歯洗浄剤の使用方法についてのエビデンスが示されつつある。今回は,これまで行ってきた酵素入り過酸化物系義歯洗浄剤の研究結果をもとにした患者への指導内容について話をする予定である。