一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

講演情報

一般演題(口演発表)

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一般口演1
口腔機能

2024年6月29日(土) 08:50 〜 10:10 第4会場 (107+108会議室)

座長:伊藤 智加(日本大学歯学部歯科補綴学第1講座)、堀 一浩(新潟大学大学院医歯学総合研究科包括歯科補綴学分野)

[O1-2] 継続的な口腔機能訓練の効果に関する検討:能勢健康長寿研究(のせけん)

○高阪 貴之1、和田 誠大1、明間 すずな1、長谷川 大輔1、武内 聡子1、上田 和美2、小澤 純子3、吉本 美枝4、豆野 智昭1、権田 知也1、池邉 一典1 (1. 大阪大学大学院歯学研究科 有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座、2. はぐくむ歯科クリニック、3. 大手前短期大学 歯科衛生学科、4. 京都府歯科衛生士会)

【目的】
 大阪府豊能郡能勢町は,介護予防事業のひとつとして,口腔機能訓練「かみかみ百歳体操」の実施に取り組んでいる。我々は2022年度より,本学医学部保健学科とともに,同事業の効果検証を目的に,能勢健康長寿研究(のせけん)に参画し,“通いの場”にて歯科衛生士による歯科保健指導を実施している。本研究では,地域在住高齢者を対象に,継続的な口腔機能訓練の効果について検討するとともに,年齢層における効果の違いを明らかにすることを目的とした。
【方法】
 本研究は,“のせけん”において,2022年8月から同年12月のベースライン時,および2023年9月から同年12月のフォローアップ時の両方の歯科調査に参加した,大阪府豊能郡能勢町在住の65歳以上の高齢者259名(男性102名,女性157名)を対象とした。研究参加者の口腔機能については,嚥下機能(RSST),口腔不潔,口腔乾燥,舌口唇運動機能,舌圧,咬合力,咀嚼能率を評価した。口腔機能訓練については,かみかみ百歳体操の実施頻度に関する質問票により調査し,「週2~3回以上」と回答した者を「訓練あり群」,それ以外の者を「訓練なし群」とした。さらに,研究参加者を75歳未満(129名)と75歳以上(130名)の2群に分類した。各年齢群において,「訓練あり群」および「訓練なし群」における,ベースライン時とフォローアップ時の各口腔機能について,Wilcoxonの符合付き順位検定を用いて比較した。統計学的有意水準は5%とした。
【結果と考察】
 追跡期間中,75歳未満の「訓練あり群」においては,舌口唇運動機能が低下し,有意差を認めた。75歳未満の「訓練なし群」においては,嚥下機能および舌口唇運動機能が低下し,有意差を認めた。75歳以上の「訓練あり群」においては,嚥下機能が低下し,有意差を認めた。75歳以上の「訓練なし群」においては,嚥下機能,口腔不潔,舌口唇運動機能が低下し,有意差を認めた。本結果より,いずれの年齢層においても,「訓練なし群」の方が「訓練あり群」と比較して,口腔機能低下が多岐にわたることが示された。本研究より,継続的な口腔機能訓練の実施が口腔機能の維持に有効であることが示唆され,その効果は年齢層によって異なることが明らかになった。
(COI 開示:なし)
(大阪大学大学院歯学研究科・歯学部および歯学部附属病院倫理審査委員会承認番号 R4-E7)