一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

講演情報

一般演題(口演発表)

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一般口演1
口腔機能

2024年6月29日(土) 08:50 〜 10:10 第4会場 (107+108会議室)

座長:伊藤 智加(日本大学歯学部歯科補綴学第1講座)、堀 一浩(新潟大学大学院医歯学総合研究科包括歯科補綴学分野)

[O1-3] 20歯未満の地域高齢者における咬合力および機能歯数の介護予防に対する効果:鶴ケ谷プロジェクト

○関 大蔵1、小宮山 貴将1、大井 孝1,2、三好 慶忠1、服部 佳功1 (1. 東北大学大学院歯学研究科加齢歯科学分野、2. 石巻赤十字病院歯科)

【目的】
 20歯以上の現在歯数の保持は,死亡や要介護発生など有害な健康アウトカムのリスク軽減に寄与しうることから,8020運動などの歯科保健活動の数値目標として用いられてきた。最大咬合力も,その低下と有害な健康アウトカムとの関連を背景に,口腔機能低下症の診断などに応用されている。高齢者に行う欠損補綴の目的には,現在歯数の減少や口腔機能の低下に伴う健康アウトカムへの影響の緩和が含まれるが,その効果は十分検証されていない。本研究の目的は,現在歯数20歯未満の高齢者における,形態や機能の回復が健康寿命の延伸に及ぼす影響を,新規の要介護発生を指標に検討することである。
【方法】
 対象は2003年に宮城県仙台市鶴ケ谷地区にて高齢者総合機能評価を受診した70歳以上地域高齢者のうち,ベースライン評価時に要介護認定を受けず,口腔指標に欠損のない838名とした。曝露因子は,現在歯数,機能歯数,デンタルプレスケール50H(富士フイルム株式会社製)にて測定される最大咬合力とした。2020年までの要介護認定の有無をアウトカムとし,現在歯数20歯以上群を基準としたハザード比を,現在歯数20歯未満に咬合力200N以上の有無,機能歯数28歯の有無を重畳させCox比例ハザード分析で算出した。共変量は,年齢,性別,疾患既往歴(脳卒中,がん,糖尿病),喫煙,飲酒,身体機能,認知機能,抑うつ傾向,教育歴とした。
【結果と考察】
最大17年間の追跡の結果,要介護認定は619名に認められた。多変量モデルにおいて,現在歯数20歯以上を基準とした要介護認定のハザード比(95%信頼区間)は,20歯未満かつ咬合力200N以上群では1.13(0.91-1.39),20歯未満かつ咬合力200N未満群では1.25(1.02-1.53)となった。一方,機能歯数28歯以上/27歯以下の両群の要介護認定には有意差を認めず,要介護認定の予測において,最大咬合力などの口腔機能指標が,機能歯数などの形態的指標と比べて有用である可能性が推察された。今後,補綴装置の状態を加味した検討が必要である。現在歯数20歯未満の地域高齢者において,最大咬合力の回復は,現在歯数20歯以上の維持と同程度の介護予防を達成できることが示唆された。(COI開示:なし)
(東北大学大学院医学系研究科研究倫理委員会承認番号2017-1-312)