The 35th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演発表)

一般演題(口演) » [一般口演2] オーラルフレイル・口腔機能低下症

一般口演2
オーラルフレイル・口腔機能低下症

Sat. Jun 29, 2024 10:20 AM - 11:40 AM 第4会場 (107+108会議室)

座長:奥野 健太郎(大阪歯科大学高齢者歯科学講座)、谷口 裕重(朝日大学歯学部摂食嚥下リハビリテーション学分野)

[O2-7] 大腿骨骨折で手術適応となった高齢入院患者の口腔機能と食形態との関係

○鰕原 賀子1、元開 早絵1、町田 麗子1、児玉 実穂1、田村 文誉1,2、菊谷 武1,2 (1. 日本歯科大学附属病院 口腔リハビリテーション科、2. 日本歯科大学 口腔リハビリテーション多摩クリニック)

【目的】入院患者の食形態選定にあたり,患者の口腔機能に応じた食形態が選定・提供されずに窒息事故や誤嚥を起こすケースが報告されている。本研究では,食形態選定の際に参考にすべき条件の明確化を目的とし,大腿骨骨折で手術適応となった高齢入院患者を対象に口腔機能と食形態との関連を検討した。
【方法】2022年6月から2023年5月の1年間に大腿骨骨折で手術適応となった患者183名のうち,同意の得られた176名(男性39名,女性137名,平均年齢85.1±5.8歳) を対象とした。摂食嚥下リハビリテーションを専門とする歯科医師1名が,入院時に歯式,口腔湿潤度(口腔水分計 ムーカス🄬),舌圧(JMS舌圧測定器)の評価を行った。これらの結果と入院時の改訂長谷川式簡易認知評価スケール(カットオフ値20/21点)を参考に,入院時に提供されていた食形態(以下,入院時食形態)と歯科医師が推奨した食形態(以下,推奨食形態)との関連を検討した。
【結果と考察】認知機能低下者は109例(61.9%),機能歯数は19歯以下が50例(28.4%),口腔湿潤度は27.0以下が153例(89.8%)であった。舌圧の測定不可は92例,30kPa以下は66例,30kPa以上は18例であった。口腔機能評価の結果から,入院時食形態と推奨食形態に乖離があると判断したのは全体の62例(35.2%)であり,乖離の割合は嚥下調整食群と比較して常食群で有意に高かった(p<0.001)。入院時食形態において常食の選定を説明する因子を検討したところ,認知機能,機能歯数,舌圧測定の可否において有意な関連(p<0.001)を認めたが,舌圧の実測値や口腔湿潤度との関連は認められなかった。
食形態選定には認知機能,機能歯数,舌圧測定の可否と有意な関連があった。認知機能低下者においては舌圧測定が困難な者も多く,児玉ら(2004)や中東ら(2015)の報告にあるような実測値が有効でない場合があるため,舌圧の測定可能な認知機能と咬合支持を有していることが重要であると考えられた。食形態選定にあたり対象者に応じた口腔機能の評価を選択する必要があることが示唆された。
(COI開示:なし)(日本歯科大学 倫理審査委員会 承認番号 NDU-T2019-03)本研究は科研費(JSPS 科研費 若手研究 19K19337)の助成を受けたものである。