The 35th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演発表)

一般演題(口演) » [一般口演4] 加齢変化・基礎研究

一般口演4
加齢変化・基礎研究

Sat. Jun 29, 2024 2:20 PM - 3:20 PM 第4会場 (107+108会議室)

座長:濵 洋平(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野)、田中 信和(大阪大学歯学部顎口腔機能治療部)

[O4-4] 若年者と高齢者における嚥下衝動の比較

○濵田 雅弘1、田中 信和2、野原 幹司1、五條 菜央2、阪井 丘芳1 (1. 大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能治療学教室、2. 大阪大学歯学部附属病院 顎口腔機能治療部)

【目的】
 高齢者において,誤嚥性肺炎は生命予後に関わるため,その原因となる誤嚥の予防は重要な課題のひとつである。誤嚥が生じる原因については様々な報告があるが,その中でも我々は高齢者での低下が報告されている嚥下反射の惹起に着目し,研究を行ってきた。嚥下反射の惹起は末梢からの刺激だけではなく,大脳皮質からの調整を受けることが明らかになっている。大脳皮質からの調整とは「飲み込もう」という意志が嚥下反射の惹起に影響することを示しており,その影響の程度を「飲み込みたい」感覚の強さとして捉えることができる。我々はこの感覚を嚥下衝動と定義し,定量評価が可能であることを本学会にて明らかにした。そこで,本研究では先行研究において確立した定量評価方法を用いて,加齢が嚥下衝動に与える影響を明らかにするために,若年者と高齢者の嚥下衝動を比較した。
【方法】
 対象は嚥下障害の既往のない若年者10名(男性5名,女性5名,年齢27.1,SD=5.9歳),ならびに高齢者19名(男性13名,女性6名,年齢74.9,SD=6.6歳)とした。嚥下衝動は水を咽頭に注入した時の強さを修正Borgスケールを用いて点数で回答させることにより測定した。まず,被験者に鼻咽喉ファイバースコープ,カテーテルチューブを鼻腔から中咽頭まで挿入した。その後,カテーテルチューブからシリンジポンプを用いて水を注入した。その際,水は咽頭後壁を伝い,梨状窩に溜まるように注入した。また,咽頭の解剖学的な形態差を考慮した測定を行うために,水の注入時は嚥下を我慢させ,咽頭への水の最大注入量を測定した。その後,最大注入量の半分量を注入した時の若年者と高齢者の嚥下衝動を比較した。
【結果と考察】
 咽頭への水の注入量について,若年者と高齢者では最大注入量には有意差は認められなかった(p=0.18)。さらに,最大注入量の半分量を注入した時の嚥下衝動は高齢者では有意に低下していた(p<0.01)。これらの結果から,高齢者では若年者と比べて解剖学的な形態の違いによる咽頭への注入量に差はないが,嚥下衝動が低下しており,そのことが高齢者における嚥下反射の惹起遅延に影響している可能性が示唆された。
(COI開示:なし)
(大阪大学大学院歯学研究科・歯学部及び歯学部附属病院倫理審査委員会承認番号:R4-E15)