一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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一般演題(口演発表)

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一般口演5
全身管理・全身疾患/連携医療・地域医療

2024年6月30日(日) 09:00 〜 10:30 第4会場 (107+108会議室)

座長:酒井 克彦(東京歯科大学オーラルメディシン・病院歯科学講座)、中川 量晴(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野)

[O5-1] 全身麻酔を必要とした高血圧症および歯科治療恐怖症の高齢患者

○旭 吉直1,2、宮本 順美1,2、杉本 有加2、大道 士郎1,2 (1. 社会医療法人大道会森之宮病院、2. 社会医療法人大道会ボバース記念病院)

【緒言・目的】
加齢により動脈が器質的,機能的に変化するため,高齢者の中には高血圧症を有している者が多く,これらの患者においては精神的ストレスや疼痛により容易に急激に血圧が変動する。また,高血圧症による合併疾患が多いのも高齢者の特徴である。今回私達は,亜酸化窒素吸入鎮静法では歯科治療時の血圧のコントロールができず,静脈内鎮静法,静脈内麻酔法,全身麻酔法を必要とした高血圧症および歯科治療恐怖症の高齢患者の1例を経験したので報告する。
なお,本発表にあたっては文書により患者の同意を得ている。
【症例および経過】
患者:79歳(今回初診時),女性。既往歴および現病歴:高血圧症,糖尿病,高脂血症,一過性脳虚血発作,良性発作性頭位めまい症などがあり,かかりつけの内科でテルミサルタンとニフェジピンにより血圧がコントロールされていた。その他にアスピリン,糖尿病薬,高脂血症薬など多数の薬剤が処方されていた。右上智歯の齲蝕が進行し, 4年前に自宅近くの歯科医院で抜歯を試みたが局所麻酔後に気分不良となり中止した。2年後に別の歯科医院で抜歯を試みた際も表面麻酔中に血圧が上昇したため中断し以後放置していたが,内科医の紹介で当院を受診した。
初診時,智歯は齲蝕が進行して既に保存困難であった。普段は問題ないとのことであったが,血圧を測定したところ,170/77 mmHgであった。歯科治療,特に局所麻酔を使用する処置で精神的に過度に緊張してしまうとのことで,歯科治療恐怖症と考えられた。別の日に歯科麻酔医が亜酸化窒素吸入鎮静法を試みたが血圧は219/102 mmHgにまで上昇し,断念した。約3週間後にミダゾラムによる静脈内鎮静法により抜歯を行った。入室直後血圧は192/82 mmHgであったが,鎮静によりすぐに降圧し,140/70 mmHg 程度で無事にコントロールできた。翌年プロポフォールによる静脈内麻酔下に右上第2大臼歯の抜歯を行った。その8か月後に右上第1小臼歯の抜歯,ブリッジ形成をプロポフォール,レミフェンタニルによる全身麻酔下に実施した。麻酔導入直後に血圧が低下してエチレフリン塩酸塩を投与した。
【考察】
今回,亜酸化窒素吸入鎮静法,静脈内鎮静法,静脈内麻酔法,全身麻酔法を試行した。今後も処置に応じて適切な方法で鎮静や全身麻酔を行うことが必要と考えられた。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)