一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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一般演題(口演発表)

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一般口演5
全身管理・全身疾患/連携医療・地域医療

2024年6月30日(日) 09:00 〜 10:30 第4会場 (107+108会議室)

座長:酒井 克彦(東京歯科大学オーラルメディシン・病院歯科学講座)、中川 量晴(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野)

[O5-2] 頬粘膜びらんを契機に診断されたメトトレキサート関連リンパ増殖性疾患の一例

○松村 香織1,2、鈴木 宏樹1,3 (1. 公立八女総合病院、2. 九州大学病院顎口腔外科、3. 医療法人福和会)

【緒言・目的】
メトトレキサート (MTX) は、葉酸代謝拮抗剤のひとつで、自己免疫疾患に対する免疫抑制作用や非上皮性腫瘍に対する抗腫瘍効果を有する薬剤である。特に関節リウマチ (RA) における有効性が高く、RAに対する標準的な治療薬として頻用されている。しかし、MTX投与の重篤な副作用としてMTX関連リンパ増殖性疾患 (MTX-LPD) があり、節外性病変として口腔に症状が現れることがある。口腔内の発症部位は歯肉が多く、頬粘膜における報告は稀である。今回われわれは、頬粘膜潰瘍を契機にMTX-LPDと診断された1例を経験したのでその概要を報告する。
【症例および経過】
94歳、女性。関節リウマチに対し、10年前よりMTXを内服していた。202X年6月頃に特に誘因なく生じた左側頬粘膜の潰瘍を自覚した。徐々に増大し疼痛も生じたため7月上旬に近在歯科診療所を受診し、副腎皮質ステロイド口腔粘膜用剤の処方を受けた。2週間薬剤塗布を行うもさらに範囲が拡大したため、202X年7月中旬に当科紹介受診となった。左側頬粘膜に直径約10mmの境界明瞭な潰瘍を認めた。潰瘍は比較的浅く、表面には偽膜で覆われており、表面均一であった。周囲粘膜に硬結は触知しなかったが、潰瘍周囲の粘膜は若干隆起していた。接触痛は軽度認めた。所属リンパ節の腫脹は認めなかった。正常粘膜を一部含めて生検を行い、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫 (DLBCL) の所見を認めたことからMTX-LPDの確定診断となった。MTX処方医と情報連携を行い、MTX投与を中止したところ、約3週間で口腔内病変は消失した。当院血液腫瘍内科にて全身精査を実施したが、口腔以外の他部位に病変は認めなかった。現在も定期的な経過観察を継続しているが、病変の再燃なく経過している。なお、本発表に当たり患者本人より同意を得ている。
【考察】
RAの治療薬としてMTXが普及する一方で、口腔におけるMTX-LPDの報告例は増加している。MTX服用患者の口腔粘膜に潰瘍を認めた場合は、MTX-LPDを念頭に診療を行う必要がある。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)