一般口演6
症例・施設1

[O6-2] アルミノックス治療を受けた中咽頭がん患者に対して専門的口腔ケア介入を行った1例

○長浜 妙子²、井手 健太郎¹、宮里 優梨亜¹、村橋 信¹、小山 宏樹¹、中村 博幸¹ (1. 琉球大学大学院医学研究科 顎顔面口腔機能再建学講座、2. 口腔ケアセンター)

【緒言・目的】
アルミノックス治療は光化学反応を利用した新しいがんの治療法であり，フタロシアニン化合物とがん細胞表面のEGFRに結合する抗体を組み合わせた薬剤である。アキャルックス^®を投与後，近赤外線を照射することでがん細胞膜上の薬剤が活性化され，細胞膜に不可逆的な障害を与える治療である。本邦においてアルミノックス治療による口腔粘膜炎の副作用の報告はほとんどみられない。この度われわれは，アルミノックス治療を行った中咽頭がん患者の口腔ケアを行った症例を経験したので報告する。
【症例および経過】
患者：70歳，男性，初診：2014年1月，現病歴：2014年４月琉球大学病院耳鼻咽喉科受診し中咽頭がんに対して術前化学放射線療法施行後，全身麻酔下に舌部分切除術及び咽頭摘出術を施行した。2023年７月CT検査にて左側舌根にがんの再発が疑われ，アルミノックス治療を行う方針となり，周術期口腔ケア介入の依頼で当科を紹介受診した。既往歴：甲状腺機能低下症，早期胃がん，大腸ポリープ，ＨＢＶ，アルコール依存症，うつ病。現症：上顎は７┘残根状態，下顎は無歯顎であった。口腔粘膜に軽度乾燥が認められ，舌苔，味覚異常やカンジダ様白苔は認められなかった。左側舌根から口腔底にかけてがん再発を疑う腫瘤形成が認められた。処置及び経過：アルミノックス治療開始前に，治療に伴う口腔内の副作用とセルフケア方法の説明を行った。治療４日目より粘膜炎が出現し，1週間後から歯科衛生士による綿球とスポンジブラシでの清拭を行った。口腔粘膜炎増悪に伴い局所管理ハイドロゲル創傷被膜・保護材（エピシル）の処方や生理食塩水での含嗽を励行した。20日目まで口腔粘膜炎は増悪したが，27日目には改善した。
なお，本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
アルミノックス治療の照射方法は，表面のがんに有効なFrontal　diffuserと深さのあるがんに有効なCylindrical　diffuserの２種類がある。本症例では，深さのあるがんに有効なCylindrical　diffuserを施行したが口腔内と咽頭への浮腫，口腔粘膜炎が出現したが原因は不明である。今後，従来の口腔ケアとは異なるケアプロトコールの確立とアルミノックス治療による口腔内の副作用発症メカニズムについて解析が必要と思われた。　　　

（COI開示：なし）
（倫理審査対象外）