一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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一般演題(口演発表)

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一般口演7
症例・施設2

2024年6月30日(日) 13:10 〜 14:10 第4会場 (107+108会議室)

座長:寺中 智(足利赤十字病院リハビリテーション科)、山内 智博(がん・感染症センター都立駒込病院歯科口腔外科)

[O7-2] 認知症を伴った高齢終末期口腔癌患者の緩和的歯科介入経験

○佐藤 はるか1、森 美由紀1、大沢 啓1、宮本 敦子1、森 彩乃1、齊藤 美香1、大鶴 洋1,2、平野 浩彦1 (1. 東京都健康長寿医療センター 歯科口腔外科、2. 東京都)

【緒言・目的】
 認知症を伴う口腔癌患者の治療では、インフォームドコンセントの問題や認知症周辺症状の対応等に難渋することが多い。今回、認知症を伴う高齢終末期口腔癌患者に対して、緩和的な歯科的対応を経験したので報告する。
【症例および経過】
 患者:80歳代、女性。既往歴:糖尿病、小脳梗塞後、脳血管性認知症。認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ度。現病歴:X-6年、右頰粘膜癌(T2N1M0)のため、他院で右頬粘膜悪性腫瘍切除術および頸部郭清術施行した。X年Y-2月に局所再発と頸部リンパ節転移を指摘されたが、患者と家族は根治的治療を希望せず、Best Supportive Careの方針となり、当科へ紹介となった(第1病日)。当科初診時、右頬部~口蓋にかけて腫瘍の浸潤および右頸部リンパ節転移がみられた(cT4aN2cM0)。右頬部の疼痛が強く経口摂取困難から脱水をきたし、当科に緊急入院した。せん妄がみられ、患者本人との対話は困難であった。処置及び経過:家族や緩和ケア内科、他職種等と治療方針について協議した結果、疼痛緩和のため、薬物調整や緩和照射を行い、自宅近くの施設へ退院する方針となった。第5病日より頰粘膜および口蓋に対する緩和的放射線療法(30Gy/10fr)を開始した。当科では入院中に口腔衛生管理を行った。患者は傾眠のため意思疎通が困難であったが、苦悶表情や呼吸回数等を観察しながら口腔衛生管理を実施した。家族より患者の嗜好調査を行い、甘味の強い栄養食品を導入した。第32病日、体動困難になり病室での口腔衛生管理を開始した。退院にむけて、フェンタニル持続皮下注射から貼付薬と内服薬に剤型を変更した。第53病日施設に退院、第108病日死亡した。なお,本報告の発表について患者家族から同意を得ている。
【考察】
 本症例では、意思疎通困難な患者本人に代わり,患者家族が中心となり、他職種と連携し治療方針を決定した。その結果、疼痛管理、せん妄予防、栄養補給の持続、口腔衛生管理を実施することで施設への退院が可能となった。認知症を伴う高齢終末期癌患者の対応では、患者を支える人たちから聴取を行い、他職種や地域と治療方針の決定や処置を連携する等、多角的対応が重要であると考える。
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)