The 35th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター発表) » 介護・介護予防

介護・介護予防(質疑応答)

Sat. Jun 29, 2024 10:40 AM - 11:40 AM ポスター会場 (大ホールC)

[P-07] ペクチン含有口腔ジェル剤による口蓋の剥離上皮膜の除去効果

○朝比奈 滉直1、岡田 芳幸1、小川 康一2、小笠原 正3,4 (1. 広島大学病院障害者歯科、2. 株式会社フードケア、3. よこすな歯科、4. 松本歯科大学)

【目的】
 口腔剥離上皮膜形成者の口腔ケアには,通常,剥離上皮膜をふやかし,除去し易くするために口腔保湿剤が用いられる。ところが,粘膜に固着した乾燥膜状の剥離上皮膜の場合,その除去が困難となり,出血を伴うこともある。そこで我々は,既存の口腔保湿剤とは異なる水溶性高分子(ペクチン)を含んだジェルを用いた際の剥離上皮膜の除去効果について検討した。
【方法】
 非経口摂取で経管栄養の要介護者のうち,口蓋付着物を確認できた8名の対象者を,高分子ジェル群あるいはグリセリン含有保湿剤群にランダムに振り分けて,以下に示す調査を5日間で計6回行った。調査として,歯科医師1人が口腔内診査にて口蓋付着物の有無を確認後,付着物を認めた場合は形態を記録し,病理標本作成に必要最低限の量だけ採取した。その後,口腔ケアとして水と歯ブラシによる歯面清掃と,高分子ジェル/グリセリン含有保湿剤,スポンジブラシ,軟毛歯ブラシ,ガーゼを用いた付着物除去,清拭(粘膜ケア)を行った。口蓋の粘膜ケアに要した時間と粘膜ケア後の口蓋出血点数を記録した。調査終了後,高分子ジェル群とグリセリン群を入れ替えて同様に調査を行った。付着物から病理標本を作製し,顕微鏡で重層扁平上皮由来の角質変性物が認められた場合は剥離上皮膜と診断した。また形態は視診により,なし,粘液状,粘稠状,乾燥膜状に分けた。カイ二乗検定を用いて,群間に剥離上皮膜形成数の差がないことを確認後,Mann-WhitneyのU検定を用いて,剥離上皮膜形態別にケア時間の比較を行った。出血点数の比較はFisherの直接確率計算を用いた。
【結果と考察】
 高分子ジェル群では,乾燥膜状における口蓋粘膜ケア時間が有意に短かった(P=0.0498)。また,出血点数(P<0.001),出血人数(P=0.0386)が有意に少なかった。
 ペクチンは表面保湿効果に加え,皮下への水分浸透と保持を助けるため多くの化粧品に用いられている。そのため,高分子ジェルの水分浸透性が乾燥膜状の剥離上皮膜基底部をふやかした結果、除去時間の短縮,出血率の低下につながったと考えられた。以上から,ペクチン含有口腔ジェルは既存のグリセリン含有保湿剤よりも高い除去効果を有することが示唆された。
(COI開示:なし)
(広島大学 倫理審査委員会承認番号 E2022-0243)
(UMIN-CTR登録なし)