The 35th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター発表) » 症例・施設-2

症例・施設-2(質疑応答)

Sun. Jun 30, 2024 10:40 AM - 11:40 AM ポスター会場 (大ホールC)

[P-103] 施設入居中の脳出血後遺症による摂食嚥下障害患者に対し多職種が連携して訓練を行い嚥下機能が改善した症例

○上杉 雄大1,2、伊原 良明2、中西 あゆみ2,3、野末 真司2 (1. 医療法人社団 湘南誠心会 パーク歯科クリニック 訪問診療部、2. 昭和大学歯科病院 口腔機能リハビリテーション科、3. 医療法人社団 湘南誠心会 大和パーク歯科クリニック)

【緒言・目的】
今回,われわれは高齢者施設への歯科訪問診療にて,脳出血後遺症による摂食嚥下障害患者に対し,多職種が連携して嚥下治療を継続し,患者の嚥下機能が改善した症例を経験したので報告する。なお本症例報告は,患者家族に書面にて同意を得たうえで行った。
【症例および経過】
78歳,女性。主訴:少しでも口から食事をしてほしい。既往歴:左前頭葉脳出血,前頭葉側頭葉皮内出血,洞不全症候群。現病歴:2021年1月に左前頭葉脳出血にてA病院入院加療となった。入院中に経口摂取の再開には至らず,栄養管理は経鼻胃管となった。高次機能障害が認められ,自宅退院困難となり,B施設に入所とした。2022年2月に転倒による脳出血を認め,C病院に入院加療となった。退院後ADL低下から,2022年4月にB施設からD施設へ転居した。2022年5月にご家族とD施設の依頼にて,当院による口腔ケアを目的とした歯科訪問診療を開始した。 2022年11月にE病院にて経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)を実施した。担当内科医からの嚥下機能評価依頼にて,2023年7月に当院での嚥下介入を開始した。嚥下内視鏡(VE)検査を実施し,エンゲリード®摂取時に嚥下後咽頭部残留,喉頭侵入,誤嚥は認めないが,顕著な嚥下反射惹起時間の延長を認め,兵頭スコアは4点であった。嚥下反射惹起を促通するため,施設看護師にカプフィルム®を1日3回,口蓋へ貼付することを指導した。2023年11月に再度VE検査を実施し,嚥下反射惹起時間の短縮を認めたため,担当内科医との相談のもと,施設看護師による1日1回のエンゲリード®を用いた直接訓練を開始した。その後,施設介護士にも,食事介助の方法を指導した。2024年1月のVE検査結果から嚥下反射惹起遅延が改善し,兵頭スコアは0点であった。当院嚥下介入開始以降,発熱などの全身状態の変化は認めていない。1日1食ペースト食の摂取を目標に,訓練を継続している。
【考察】
本症例では長期間に亘り,経鼻胃管による栄養管理が実施されていた。PEGにより経鼻胃管抜去となったが,その後の嚥下機能評価が実施されていなかった。歯科医師が適切に嚥下機能を評価した後,多職種が訓練計画を共有し,連携して嚥下訓練を実施したことにより,誤嚥性肺炎など生じることなく,嚥下機能の改善が得られたものと考えられる。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)