The 35th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター発表) » 口腔機能-1

口腔機能-1(質疑応答)

Sat. Jun 29, 2024 10:40 AM - 11:40 AM ポスター会場 (大ホールC)

[P-11] 高齢者に対する口腔衛生状態の評価に関連する因子の検討

○今里 僚介1、煙山 修平1、末永 智美2、金本 路2、植木 沢美2、吉野 夕香3、尾立 光1、會田 英紀1 (1. 北海道医療大学高齢者・有病者歯科学分野、2. 北海道医療大学在宅歯科診療所、3. 北海道医療大学)

【目的】
 口腔衛生状態の悪化は誤嚥性肺炎の一つのリスクとなることが知られている。簡易的に口腔衛生状態を評価できるTCI(Tongue Coating Index)は舌背上の口腔細菌数と相関があることが報告されている。しかしながら、口腔乾燥を呈する高齢者では、TCIによる評価と口腔細菌数との結果に乖離が認められることがある。今回は、口腔乾燥がTCIと口腔内細菌数の相関に与える影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
 施設高齢者20名(平均年齢83.5±7.38歳:男女比6/14名)を対象とした。舌背上の口腔細菌数は細菌カウンタを用いて計測し、口腔バイオフィルム感染症の基準である1.00×10 ⁷CFU 以上を口腔衛生状態不良と判断した。また、口腔乾燥は口腔水分計ムーカスを用いて評価した。
【結果と考察】
 TCIでは20名中17名が口腔衛生状態不良と判定され、細菌カウンタでは20名中5名が口腔衛生状態不良と判定された。一方、口腔水分計では20名中18名が口腔乾燥と判定された。また、TCIと細菌カウンタとの散布図を用いて、その相関係数を求めたところ、R²=0.1872であり、TCIの値と口腔細菌数には相関関係はほとんど認められないという結果になった。TCIにより口腔衛生状態不良と判定された17名中12名が、細菌カウンタでは口腔衛生状態不良には該当しなかった。判定結果が一致しなかった12名のうち9名に口腔乾燥が認められた。判定結果が一致しなかった理由として、TCIは舌表面を9分割して全体的に評価しているのに対して、細菌カウンタでは舌背表面のうち舌背中央から舌尖方向にかけての限局したエリアの口腔細菌を測定していることが判定結果に影響していると考えられる。一般的に、日常の口腔ケアでは舌後方の清拭は困難であり、舌苔は舌後方に多く付着していることが多い。そのため舌の前方突出を十分に行えない高齢者に対しては口腔ケアのみならず、舌可動域訓練などを併用するのがよいと考えられる。また、口腔乾燥があると舌背表面から適切に検体を採取できてない可能性が考えられる。今後の対策として、口腔乾燥のある高齢者に対しては、検体採取法に対する工夫やTCIの結果と総合的に判断することが望ましいと考えられる。
(COI開示:なし)
(北海道医療大学予防医療科学センター倫理委員会 倫理審査承認番号第2023_10)