一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

講演情報

一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター発表) » 症例・施設-3

症例・施設-3(質疑応答)

2024年6月30日(日) 10:40 〜 11:40 ポスター会場 (大ホールC)

[P-111] 地域歯科医師会診療所に長期通院中のパーキンソン病患者の経過と対応

○似鳥 純子1、若尾 美知代1、日吉 美保1、髙橋 恭子1、矢ヶ﨑 和美1、棚橋 亜企子1、石田 彩1、佐藤 園枝1、吉浜 由美子1、間宮 秀樹1、堀本 進1、小野 洋一1、菊地 幸信1、平山 勝徳1、高橋 恭彦1、平野 昌保1、野村 勝則1 (1. 藤沢市歯科医師会)

【緒言・目的】
 パーキンソン病は進行性の神経変性疾患であり,口腔に関連する症状もみられるため,嚥下機能の評価及び口腔衛生管理が重要となる。今回,当会要介護高齢者歯科外来に10年間通院しているパーキンソン病患者について,経過と対応を報告する。
【症例および経過】
 79歳男性,要介護1。パーキンソン病のため,振戦,歩行障害,構音障害,嚥下障害,流涎が認められた。初診時の歯数は残根1本を含む26本。下顎左右第一大臼歯にインプラントがあり,義歯の使用はなく,中等度歯周病であった。定期受診のたびに補綴物脱離が続き,う蝕や歯根破折から抜歯,残根被覆に至り,現在の歯数は残根13本を含む16本。下顎に部分床義歯,上顎は残根上総義歯を装着している。初診時は介護不要であったが,徐々に転倒が増え日常生活の介助が必要となった。来院5年目には診療時の呼吸循環モニタで不整脈が見つかり,心房細動と診断された。同年,嚥下障害も進行したため当会の摂食嚥下リハビリテーション外来を受診し,検査の結果不顕性誤嚥が示唆され,咽頭期の障害も認められた。交互嚥下や食形態の提案,嚥下体操などの指導が行われたが,介助者である妻の動揺が激しく,妻への精神的ケアも課題となった。その後も歩行障害が進行し,診療室での移動も独歩から,杖,両脇からの介助と変化し,現在は車椅子を使用している。振戦が激しいために血圧測定も不能なことがあり,大きめのU字クッションを抱えさせて体位の安定を図っている。診療中はユニットの角度と吸引に注意し,口腔衛生管理は主に介助者への指導を行っている。来院ごとに,食事についての聞き取りや,嚥下体操などの訓練の確認及び,体重測定や呼吸状態の確認も行なっている。
なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 本症例はこの10年間で,運動障害が顕著に進行し,多数の歯牙喪失は転倒やジスキネジアの影響も大きいと考えられた。嚥下障害の進行も認められたが,代償的アプローチにより,食事に関しては大きな変化なく経過している。進行性の疾患であるため,今後も体調や口腔内の変化に注視し,介助者の気持ちにも寄り添いながら,口腔衛生管理の徹底や可能な範囲での嚥下機能訓練の継続のサポートに努めたいと考えている。
(COI開示:なし)(藤沢市歯科医師会 倫理審査委員会承認番号 2023-006)