一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

講演情報

一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター発表) » 口腔機能-1

口腔機能-1(質疑応答)

2024年6月29日(土) 10:40 〜 11:40 ポスター会場 (大ホールC)

[P-12] 高齢者に対する超音波ブラシを用いた口腔機能トレーニングの効果の検討

○前田 芙沙1、大神 浩一郎1、大久保 真衣2、上田 貴之3、内山 宙3、江戸野 大河1、橋本 玲央名1、片倉 朗4 (1. 東京歯科大学千葉歯科医療センター総合診療科、2. 東京歯科大学千葉歯科医療センター摂食嚥下リハビリテーション科、3. 東京歯科大学老年歯科補綴学講座、4. 東京歯科大学口腔病態外科学講座)

【目的】
 口腔機能と認知症は,密接な関係があることが報告されている。特に舌圧と舌口唇運動機能低下が認知機能の低下につながる可能性がある。これは,舌口唇運動機能の低下が会話困難感に起因する社会参加の低下を介して認知機能の低下につながるためと考える。認知症の前駆状態である軽度認知障害(MCI)が着目されているが,認知症へ移行するものと,正常に戻るものもあることが知られている。そのため,口腔機能管理を行うことで認知機能が改善される可能性がある。今回,舌圧や頬口唇のトレーニングに特化した認知機能に依存しない舌ブラシを用いた短時間で侵襲性の低い簡便な方法を立案した。本研究は,口腔機能低下症と診断された外来患者に対し,新しく立案したトレーニングの口腔機能に対する効果を明らかにすることを目的とした。
【方法】
 東京歯科大学千葉歯科医療センターにおいて,口腔機能精密検査(口腔衛生状態,口腔湿潤度,咬合力,舌口唇運動機能,舌圧,咀嚼機能,嚥下機能)を実施し,3項目以上に該当し口腔機能低下症と診断された患者12名(男性5名,女性7名,平均年齢79.5±4.7歳)を対象に, RSST,MWST,口唇閉鎖力測定を行った。口唇閉鎖力は,口唇閉鎖力測定器(りっぷるくん,松風)を用いて3回測定し最大値を求めた。参加者に,超音波ブラシ(sonicare,PHILIPS)に舌ブラシを装着し,頬・口唇,舌マッサージを1日3回行わせた。介入1ヶ月後に再評価を行った。口腔機能精密検査口唇閉鎖力の介入前後についてWilcoxonの符号付順位検定を行った(α=0.05)。
【結果と考察】
 介入前後で口唇閉鎖力に有意差が認められ,平均増加率は18.2%であった。舌口唇運動機能「タ」は5.8回/秒が6.2回/秒に,舌圧は24.6MPaが26.6MPaに増加傾向が認められた。本研究における口腔機能トレーニングの特徴は,器具を用いた簡便なトレーニングを取り入れたことにある。口唇舌頬の訓練には手指による口輪筋の進展や収縮を行うものや,器具を使用したボタンプルなどの訓練がある。本トレーニング法は,これらの訓練法よりも超音波ブラシに装着した舌ブラシを当てるだけであるという簡便さにより,中断することなく継続につながり,効果が認められたと考える。
(COI開示:なし)
(東京歯科大学倫理審査委員会承認番号1113)