一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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全身管理・全身疾患(質疑応答)

2024年6月29日(土) 10:40 〜 11:40 ポスター会場 (大ホールC)

[P-17] 唾液αアミラーゼ測定による口腔ケア時のストレス評価

○髙橋 裕幸1、塚本 裕介1、権 暁成1、増田 一郎1、梶原 美絵2、岡 俊一2、小笠原 浩一1 (1. 公益社団法人 葛飾区歯科医師会、2. 日本大学歯学部 歯科麻酔学講座)

【目的】
 口腔衛生状態が全身疾患の発症や進行に関与することは広く知られており,なかでも高齢者への口腔ケアは必要不可欠と認識されている.歯科治療は痛みや局所麻酔など様々な刺激を患者に与え,特に循環機能や自律神経系が変化している高齢者にとって歯科治療による身体的・精神的ストレスは,全身的偶発症を引き起こす原因となる可能性が高い.しかし循環器疾患を有する患者における口腔ケア時のストレス評価をした報告は少ない.唾液中のαアミラーゼはストレスにより分泌量が増加することからストレスの評価法として多く用いられている.そこで我々は口腔ケア前後に唾液中のαアミラーゼと血圧および脈拍数を測定することで,口腔ケアが高齢者に与えるストレスについて検討した.
【方法】
 都内某要介護高齢者専用の固定診療所で口腔ケアを必要とする循環器疾患を有する患者のうち,従命可能な患者28名を対象とした。口腔ケアとして,超音波スケーラーを用いて歯石除去を行った14例(S群)と回転式器具にブラシを装着して機械的歯面研磨を行った14例(B群)の2群に分けた.唾液の採取は,入室前の安静時,超音波スケーラーによる歯石除去または機械的歯面研磨開始前,治療終了後,帰宅前の計4回行った.血圧および脈拍は経時的に測定した.
【結果と考察】
 循環動態に関しては,S群で収縮期血圧が治療終了後に有意に上昇したが,B群では経時的に有意な変化はみられなかった。αアミラーゼの測定量はS群では治療終了後に有意に上昇したが,B群では有意な変化はみられなった。 S群において処置前後で循環動態が変化したこと,また処置後にαアミラーゼが有意に上昇したことから超音波スケーラーによる歯石除去がストレッサーとなることが示唆された。一方でB群では処置前後において循環動態およびαアミラーゼに有意な変化を認めなかったことから機械的歯面研磨はストレッサーになりにくいと考えられた。侵襲度が低いと思われる口腔ケアにおいてもストレスがかかり全身的偶発症を誘発する可能性があるという認識を持ち,治療に臨むことが必要である。
(COI開示:なし)
葛飾区歯科医師会倫理委員会承認番号 2019‐02