一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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全身管理・全身疾患(質疑応答)

2024年6月29日(土) 10:40 〜 11:40 ポスター会場 (大ホールC)

[P-19] パーキンソン病の重症度と口腔環境の関連性

○山本 愛里1,2、梅本 丈二1、溝江 千花1、柏崎 晴彦2 (1. 福岡大学病院摂食・嚥下センター、2. 九州大学大学院歯学研究院口腔顎顔面病態学講座高齢者歯科学・全身管理歯科学分野)

【目的】
 パーキンソン病(PD)は進行とともに運動機能や上肢機能が低下し,口腔衛生管理が疎かになることが少なくない。PD患者の死因の上位は誤嚥性肺炎であり,口腔健康管理が重要である。しかし,症状の進行とともに動作緩慢,無動となり口腔健康管理が難しくなる。服用薬の影響で唾液分泌が低下し,口腔乾燥や自浄作用の低下によりう蝕が多発することもある。そこで本研究ではPDの重症度と口腔環境の関連について検討した。
【方法】
 当院脳神経内科にて2021年10月から2022年10月まで入院したPD患者50人(男性21人,女性29人,平均年齢64.8±8.4歳)を対象に歯磨き回数,使用歯ブラシ,残存歯数,OHAT-Jなどの調査を実施した。また診療録より発症年齢,罹病期間,Hoehn & Yahrの重症度分類,運動機能(MDS-UPDRS Part3) ,上肢機能(STEF) ,認知機能(MMSE),L-ドパ換算用量相当量(LEDD)の各データを抽出し,口腔環境との関連性を検討した。
【結果と考察】
 罹病期間(平均11.98±6.96年)とOHAT-Jスコア(4.56±2.7)に有意な相関関係が認められた(r=0,p<0.05)。罹病期間が長くなるほどOHAT-Jスコアが悪くなることが示唆された。OHAT-Jスコアは,Hoehn & Yahrの軽症2,3群が2.7±0.4と重症4,5群が5.2±3.5であり,重症群の方が悪かった(p<0.01)。OHAT-Jスコアの各項目の合計点の内訳において,口腔清掃0点の群(1.0±1.3),口腔清掃1点の群(4.1±2.0),口腔清掃2点の群(7.4±2.2)と群間に有意差があり(p<0.01),口腔清掃力の影響が示唆された。また、年齢とSTEF年齢別平均点との差に有意な相関関係が認められ(r=0.469, p<0.01),加齢に伴う上肢機能の低下が示唆された。このことより,PD患者は罹病期間が長くなり,重症度が悪化することにより口腔環境が悪くなるが,上肢機能の低下による口腔清掃力の低下が影響している可能性が示唆された。
          (COI開示なし)
(福岡大学病院倫理審査委員会承認番号H-21-09-006)