一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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連携医療・地域医療-1(質疑応答)

2024年6月29日(土) 10:40 〜 11:40 ポスター会場 (大ホールC)

[P-24] 歯科部門のない高度急性期病院にて訪問診療による周術期口腔機能管理を行った高齢患者についての調査・検討

○常清 美佑1、松尾 幸子1、縄田 和歌子1、佐藤 路子1、森田 浩光1、尾崎 茜1 (1. 福岡歯科大学医科歯科総合病院)

【目的】
 平成24年度の診療報酬改定からの周術期口腔機能管理の導入により,悪性腫瘍や心臓手術,がん化学療法等における口腔合併症の発生予防や在院日数の短縮,さらには消化器癌手術では,術後肺炎の発症および術後100日以内の死亡の有意な低下が報告されている。福岡歯科大学医科歯科総合病院では平成29年10月より済生会福岡総合病院と福岡県・市歯科医師会の3者と協働して,済生会福岡総合病院への訪問診療および歯科診療所との連携による周術期口腔機能管理(周管)を開始した。今回,過去1年間で済生会福岡総合病院外科にて癌手術のため訪問診療にて周術期口腔機能管理を行った高齢患者について調査・検討したので報告する。
【方法】
 令和4年11月~令和5年10月までの1年間に,悪性腫瘍疑いで手術予定にて周術期口腔機能管理を依頼された患者256名のうち65歳以上の170名を調査対象とした。対象者の性別,年齢,入院に至る主病名,術前口腔衛生管理(術口衛)介入の有無,在院日数,術後肺炎および口腔内合併症の有無について調査した。なお,統計解析にはMann-Whitney U検定を用いた。
【結果と考察】
 調査期間内に周管を依頼された高齢患者の性別・年齢の内訳は,男性91名,女性79名で平均年齢はそれぞれ74.5±5.5歳および75.9±6.3歳で両者に有意差は認められなかった。入院に至る主病名は、消化器癌が90名,肺癌が36名,肝・胆・膵悪性腫瘍が36名,乳癌が8名であった。調査対象患者のうち院内で術口衛を実施した患者は126名で,入院前にかかりつけ歯科で実施された患者は26名,術前の口腔内スクリーニングのみで無歯顎もしくは歯科介入を要しなかった患者は18名であった。なお,術前に抜歯や歯の固定などの歯科治療を要した患者は8名であった。また,院内術口衛実施群の平均在院日数は,12.2±9.6日で,かかりつけ歯科受診群(12.7±11.2日)や口腔内スクリーニングのみ群(10.6±5.3日)と比較して有意差はなかった。さらに調査対象患者に術後肺炎および口腔内合併症の発症はなかった。上記の結果から,歯科部門のない高度急性期病院での訪問診療による術前口腔内スクリーニングおよび歯科介入を要する患者への周管・術口衛介入は有用であることが示唆された。
COI開示:なし
学校法人福岡学園倫理審査委員会・承認番号第493号