[P-30] 単一老人保健施設における8020の達成状況と咬合・食形態の関連の調査
【目的】
令和4年の歯科疾患実態調査において,8020の達成者は51.6%との報告があった。しかし,訪問診療の現場においては抜歯適応の歯が残存することにより診療に苦慮することも多く,8020という言葉が浸透し歯を残してほしいという患者の希望が増えることによる弊害を感じることもある。今回の調査では,8020を達成した患者の咬合状態と食形態について,単一老人保健施設における実情を調査したので報告する。
【方法】
当院で訪問歯科診療をおこなっている単一老人保健施設にて 2019年 7 月から 2022 年 12 月までに受診した75歳以上の患者の中で,初診時の残存歯数が20本以上であり,かつ口腔内写真で残存歯の状態の確認が可能であった 56 人(男性 24人,女性 32 人,平均年齢 85.6 歳)を対象とした。診療録と初診時の口腔内写真を元にアイヒナー分類による咬合支持状態と入所時の食形態について調査を行った。
【結果と考察】
アイヒナー分類の結果は,A分類が27人で48.2%(A1:10人,A2:11人,A3:6人),B分類が23人で41.0%(B1:11人,B2:4人,B3:7人,B4:1人),C分類が6人で10.7%(C1:6人)であった。対象者が持つ残根歯は合計186本であり,一人当たり平均3.3本の残根歯を持つという結果を得た。食形態の調査では,主食・主菜共に通常の形態での提供を行なっている対象者は54.5%にとどまった。アイヒナーC分類において通常食を摂取する者の割合は少なかったが,A分類とB分類の間には大きな違いを認めなかった。
今回の調査において,20本以上の残存歯がある者においても通常食を摂取していない者が多数いることが分かった。これは,70歳以上で20歯以上の歯を有する者では「何でもかんで食べることができる」と回答した者が84.1%とする平成25年国民健康・栄養調査の結果からは大きく乖離するものであった。
高齢者において増加する未処置の残根は咬合支持を担うことができず咀嚼に寄与しない。これを避けるためにう蝕のリスク管理は重要であり,また高齢患者の長期予後が期待できない歯に対する安易な冠橋義歯による補綴歯科治療は避けるべきであると考えられた。
(COI 開示:なし)
(浜松市リハビリテーション病院 臨床倫理審査会受付番号 22-72)
令和4年の歯科疾患実態調査において,8020の達成者は51.6%との報告があった。しかし,訪問診療の現場においては抜歯適応の歯が残存することにより診療に苦慮することも多く,8020という言葉が浸透し歯を残してほしいという患者の希望が増えることによる弊害を感じることもある。今回の調査では,8020を達成した患者の咬合状態と食形態について,単一老人保健施設における実情を調査したので報告する。
【方法】
当院で訪問歯科診療をおこなっている単一老人保健施設にて 2019年 7 月から 2022 年 12 月までに受診した75歳以上の患者の中で,初診時の残存歯数が20本以上であり,かつ口腔内写真で残存歯の状態の確認が可能であった 56 人(男性 24人,女性 32 人,平均年齢 85.6 歳)を対象とした。診療録と初診時の口腔内写真を元にアイヒナー分類による咬合支持状態と入所時の食形態について調査を行った。
【結果と考察】
アイヒナー分類の結果は,A分類が27人で48.2%(A1:10人,A2:11人,A3:6人),B分類が23人で41.0%(B1:11人,B2:4人,B3:7人,B4:1人),C分類が6人で10.7%(C1:6人)であった。対象者が持つ残根歯は合計186本であり,一人当たり平均3.3本の残根歯を持つという結果を得た。食形態の調査では,主食・主菜共に通常の形態での提供を行なっている対象者は54.5%にとどまった。アイヒナーC分類において通常食を摂取する者の割合は少なかったが,A分類とB分類の間には大きな違いを認めなかった。
今回の調査において,20本以上の残存歯がある者においても通常食を摂取していない者が多数いることが分かった。これは,70歳以上で20歯以上の歯を有する者では「何でもかんで食べることができる」と回答した者が84.1%とする平成25年国民健康・栄養調査の結果からは大きく乖離するものであった。
高齢者において増加する未処置の残根は咬合支持を担うことができず咀嚼に寄与しない。これを避けるためにう蝕のリスク管理は重要であり,また高齢患者の長期予後が期待できない歯に対する安易な冠橋義歯による補綴歯科治療は避けるべきであると考えられた。
(COI 開示:なし)
(浜松市リハビリテーション病院 臨床倫理審査会受付番号 22-72)