一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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実態調査-1(質疑応答)

2024年6月29日(土) 10:40 〜 11:40 ポスター会場 (大ホールC)

[P-33] 緩和ケア病棟における入院患者の口腔管理

○宮下 みどり1 (1. 社会医療法人抱生会 丸の内病院 歯科口腔外科)

【目的】
 緩和ケア病棟はがんになっても住み慣れた地域で「自分らしく生きる」ことができるように支援する病棟である。 当院は2020年3月に中信地域では初めてとなる緩和ケア病棟が新設され,「最期まで自分らしく過ごしてもらうことをサポートする」をモットーとしている。終末期の歯科領域での問題点は貧血,低栄養,がん性悪液質などによるさまざまな原因による全身状態の悪化と,オピオイド,ステロイドの投与などの影響で,口腔乾燥,口腔カンジダ症,口腔粘膜炎,う蝕,歯周疾患の進行,義歯の不具合などがさまざまである。経口摂取の減少により自浄作用の低下から痰や剥離上皮の付着が問題となるが,自力管理は困難なため他者による口腔ケアが必須となる。
【方法】
 当科で2022年12月から2023年12月に緩和ケア病棟に入院した患者で,当科に紹介となった患者(男性16名,女性40名,平均74.1歳)の口腔内のトラブルとその口腔管理の取り組みについて報告する。
【結果と考察】
 口腔内のトラブルは口腔乾燥39名,清掃不良23名,口腔粘膜炎6名,歯石沈着10名,歯肉炎・歯周炎4名,う蝕9名と多岐にわたっていた。口腔管理はすべての患者に口腔ケアを行いながら,全身状態が安定している場合は外来でスケーリングなどの歯周治療を行い,歯髄炎などの急性症状がある場合は応急処置ではなく可能な限り治療を行った。義歯に関しては,鉤歯喪失,残根などで不適となった義歯を修理・調整し,残根も清掃性が良くなるよう形態修正,研磨を行った。
 緩和ケア病棟の患者の多くは口腔乾燥や清掃不良を認めるが自力管理が困難である。ベッドサイドで口腔ケアを施行することも大切だが,全身状態によっては気分転換を兼ねて外来で歯周治療を行い,応急処置ではなくう蝕治療,義歯修理・調整を行うことで,口腔環境の改善だけでなく,療養生活の満足度が上がることが患者や家族から聴取できた。
 緩和ケア病棟へ入院する患者への治療で必要なことは,終末期だから歯科治療はしてもらえないと悲観することなく,最期まで自分らしく過ごしてもらうことをサポートすることである。口腔ケアの重要性は然ることながら患者の状態に合わせて可及的な治療を提案することが重要である。
COI開示:なし(倫理審査対象外)