一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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加齢変化・基礎研究(質疑応答)

2024年6月29日(土) 14:20 〜 15:20 ポスター会場 (大ホールC)

[P-35] 鶏卵抗体を用いたフゾバクテリウムの選択的中和

○郝 虹煒1、南部 隆之2、川本 章代1、沖永 敏則2、髙橋 一也1 (1. 大阪歯科大学歯学部高齢者歯科学講座、2. 大阪歯科大学歯学部細菌学講座)

【目的】 
 口腔細菌叢は,ヒトとの複雑な相互作用を介して,口腔だけでなく全身の健康状態に大きな影響を及ぼしている。主要な口腔細菌の1つであるFusobacterium nucleatum(以下,Fn菌)は,口腔バイオフィルム成熟化の鍵となる細菌であり,その強い共凝集能により歯周病原菌を定着させ,協調的に歯周病を惹起する。近年,このFn菌がアルツハイマー病や高齢者の呼吸器疾患の発症にも関与しているとの知見が蓄積しつつある。我々は,口腔細菌叢の多様性を確保しつつ,細菌叢の中からFn菌だけを特異的に除去する手法を開発することを目的とし,特異的抗体を用いたFn菌中和反応系の構築を試みた。Fn菌には,animalisnucleatumpolymorphumvincentiiの4つの亜種(以下,それぞれFnA,FnN,FnP,FnV)が知られており,亜種レベルでの中和反応の検証も試みた。
【方法】 
 Fn菌へ特異的に反応する抗体として,臨床応用が可能な鶏卵抗体の作成を試みた。Fn菌の4亜種(JCM標準株)を培養後,ホルマリン殺菌した菌体を抗原とし,それぞれ産卵鶏を免疫した。4次免疫後の卵黄液を回収し,カラギーナン法を用いて卵黄液より水溶性タンパク質を抽出し,高純度の鶏卵抗体(IgY)を精製した。作成した特異的鶏卵抗体の反応特性を判定するため,ヒト口腔よりFn菌を80株分離培養し,rpoB遺伝子の配列情報を用いて,亜種の同定を行った。
【結果と考察】 
 不活化したFn菌を150日齢の産卵鶏に接種し,4亜種に特異的な精製IgYを得ることができた。HPLCにて純度を確認し,ELISAにより4亜種特異的であることを確認した。Fn分離株のタイピングを行った結果,80株の中でFnAが13株,FnPが35株,FnVが6株を得ることができた。これらの菌株を用いて中和反応を行ったところ,Fn菌亜種特異的な凝集が観察された。また,抗体存在下でFn菌の増殖阻害効果が確認できた。以上から,抗Fn菌鶏卵抗体は,in vitroにおいて口腔細菌叢から特異的にFn菌を除去する能力を有していることが明らかとなった。
(COI開示:なし)
(大阪歯科大学 医の倫理委員会承認番号111250-0)