一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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加齢変化・基礎研究(質疑応答)

2024年6月29日(土) 14:20 〜 15:20 ポスター会場 (大ホールC)

[P-38] 油性成分を主成分とした粘膜保護義歯安定剤の総義歯装着者に対する効果の検討

○竹内 みのり1、竜 正大1、上田 貴之1 (1. 東京歯科大学老年歯科補綴学講座)

【目的】
 近年の高齢化の進行に伴い,高度な顎堤吸収や口腔乾燥を呈する高齢者に対する義歯治療のニーズは高まってきている。特に総義歯治療において,顎堤吸収は義歯の維持不良や疼痛の原因となりやすく,患者のQOLの低下につながる。義歯の維持不良に対しては義歯安定剤の使用による維持力の向上も有効と考えられる。現在主に市販されている義歯安定剤は唾液と接触することで効果を発揮する。しかし,口腔乾燥患者は唾液量が少ないために,これらの義歯安定剤では十分な効果が発揮されないことが散見される。そこで今回,唾液との接触に依存しない,新規開発中の油性成分を主成分とした義歯安定剤(粘膜保護義歯安定剤,ウエルテック株式会社)に着目し,総義歯装着者に対する効果の検討を行うことを目的とした。
【方法】
 東京歯科大学水道橋病院補綴科を受診した上顎または下顎,もしくは上下顎総義歯装着者のうち,義歯の適合が良好で義歯安定剤を使用していない定期診査中の患者10名(男性7名,女性3名,平均年齢74±8歳)を対象とした。粘膜保護義歯安定剤と市販義歯安定剤をランダムに割り付け,2週間使用させた。患者に対して義歯の安定感,義歯安定剤の除去のしやすさ等,主治医に対して義歯の維持・安定度等の項目について,使用前と2週間使用後に評価を行った。患者による義歯の安定感についてはvisual analogue scale(VAS )にて評価し,対応のあるt検定を行った(α=0.05)。
【結果と考察】
 患者による義歯の安定感(VAS値)は,粘膜保護義歯安定剤使用群では使用前4.4±3.3であったものが使用後に6.6±2.9となり,また市販義歯安定剤使用群では使用前5.0±2.2であったものが使用後に7.8±1.9となり,いずれも統計学有意差を認めた。除去のしやすさは,粘膜保護義歯安定剤使用群で4名が満足と回答し,不満と回答した者はいなかった。市販義歯安定剤では3名が満足と回答し,1名が不満と回答した。歯科医師による義歯の維持・安定度の評価は,両群ともに使用後の評価で向上した。以上の結果より,粘膜保護義歯安定剤は市販義歯安定剤同様に義歯の維持や安定度を向上させるとともに,除去のしやすさにおいては,有利であることが示唆された。
(COI 開示:なし)
(東京歯科大学 倫理審査委員会承認番号1148 )