一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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口腔機能-2(質疑応答)

2024年6月29日(土) 14:20 〜 15:20 ポスター会場 (大ホールC)

[P-39] 地域在住高齢者におけるオーラルフレイルと腸内細菌叢の関連:お達者健診研究・板橋健康長寿縦断研究

○小原 由紀1、岩崎 正則1,2、白部 麻樹1、本川 佳子1、大渕 修一1、平野 浩彦1,3 (1. 東京都健康長寿医療センター研究所、2. 北海道大学大学院歯学研究院 口腔健康科学講座 予防歯科学教室、3. 東京都健康長寿医療センター 歯科口腔外科)

【目的】腸内細菌叢の構成異常を意味するディスバイオーシスが全身疾患に影響を与えるとされているが,消化の第一段階である口腔との関連性に関する報告は少ない。口腔機能の低下は低栄養につながるだけでなく腸内細菌叢にも影響を及ぼすと考えられる。そこで地域在住高齢者におけるオーラルフレイル(以下,OF)と腸内細菌叢の関連性について予備的検討を行うことを本研究の目的とした。【方法】2021年10月~2022年2月に実施した来場型健診(お達者健診研究および板橋健康長寿縦断研究)を受診した東京都の65歳以上地域在住高齢者102名(男性50名,女性52名,平均年齢75.3±5.4歳)分のデータを分析対象とした。OFの判定には,TanakaらによるOral frailty five-item checklist (OF-5)を用い,「残存歯数の減少」,「咀嚼困難感」,「嚥下困難感」,「口腔乾燥感」,「滑舌低下(舌口唇巧緻性低下)」の5項目中2項目以上該当でOFとした。次世代シーケンサーを用いた16S rRNA解析により,腸内細菌叢の門レベルの構成比,多様性指標,短鎖脂肪酸指標,腸管免疫指標を同定した。OFの有無に関連する腸内細菌叢の指標をMann–Whitney U testを用いて探索したのち,年齢,性別,体格指数,服用薬剤数を調整変数とした重回帰分析を行い,OFと腸内細菌叢の関連性を検証した。【結果と考察】OF該当群(全体の49.0%)は,OF非該当群と比較して,Bacteroidota門の構成比が有意に低い結果を示していた。重回帰分析の結果からも,OFの存在がBacteroidota門の構成比が低いことと有意に関連していた(β=-2.62,95%信頼区間:-6.25 to -0.86)。一方,腸内細菌叢に関するその他の指標とOFの有無については有意な関連性は認めなかった。本研究により,口腔の不活動は腸内細菌の最優勢菌群であり,腸管免疫に影響を与えるとされるBacteroidota門の構成比に関与する可能性が示された。本研究は予備的検討であるため,高齢期におけるディスバイオーシスと口腔機能との関連について詳細な検証を行う今後必要がある。(COI開示:なし)(東京都健康長寿医療センター倫理審査委員会: R21-035)