一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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連携医療・地域医療-2(質疑応答)

2024年6月29日(土) 14:20 〜 15:20 ポスター会場 (大ホールC)

[P-57] 後期高齢者のBMI 低値と主観的咀嚼能力低下が要介護認定に及ぼす影響について(後方視的観察研究)

○齋藤 寿章1、矢野 彰三2、富永 一道1,2、前田 憲邦1、清水 潤1、井上 幸夫1 (1. 島根県歯科医師会、2. 島根大学地域包括ケア教育研究センター(CoHRE))

【目的】
 本研究の目的は後期高齢者のBMI 低値と主観的咀嚼能力低下が要支援以上の認定(要介護認定)に及ぼす影響について島根県後期高齢者健診の後方視的生存分析用データセットを用いて縦断的・探索的に検討することである。
【方法】
 調査対象は令和2年度島根県後期高齢者健診を受診した28204名。このうち,健診時年齢75歳未満の者,要介護認定者,欠損値がある者を除外した19722名(男性7722名/女性12000名:39%/61%)を解析対象とした。観察期間は令和2年4月1日から令和4年3月31日,追跡期間は健診日から要介護認定を初めて受ける日までの時間(月単位)とした。要介護認定をイベントとし観察期間中の死亡・転出・生活保護移行,観察終了時の生存を打ち切りとした。BMI≤20かつ主観的咀嚼能力不良群,BMI≤20かつ主観的咀嚼能力良好群,BMI>20群(BMI・咀嚼3群)に分類し生存時間解析を行った。各健診項目について性・年齢・BMIを調整変数としたCox比例ハザードモデル,多変量調整Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比を求めた。さらに,BMI≤20かつ主観的咀嚼能力不良該当・非該当2群について傾向スコアによる背景因子調整後Kaplan-Meier法を用いたlog-rank検定を試みた。
【結果と考察】
 追跡期間は平均16.9月(最大23.0月),この間の要介護認定者数は1892名(男性666名/女性1226名:35%/65%)であった。多変量調整Cox比例ハザードモデルでハザード比が有意であった変数は,性,年齢,血圧,GOT,HbA1c,尿蛋白,BMI・咀嚼3群,健康状態,体重変化,運動・転倒,認知機能,社会参加であった。BMI>20群に対するBMI≤20かつ主観的咀嚼能力不良群のハザード比は1.24(p値<0.001)であった。また,BMI>20群に対するBMI≤20かつ主観的咀嚼能力良好群のハザード比は有意ではなかった(p値0.092)。傾向スコアを用いた検討でもBMI≤20かつ主観的咀嚼能力不良群の要介護認定率の上昇が視覚的に確認できた。BMI低値に加えて咀嚼能力低下は要介護認定に影響を及ぼすことが示唆された。後期高齢者健診のBMI低値かつ主観的咀嚼能力低下該当者への歯科受診勧奨が望まれる。
(COI:開示なし)
(島根大学倫理委員会承認番号20220723-1)