The 35th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター発表) » 症例・施設-1

症例・施設-1(質疑応答)

Sat. Jun 29, 2024 2:20 PM - 3:20 PM ポスター会場 (大ホールC)

[P-64] 頭頸部重複癌の放射線化学療法後の嚥下障害患者に対し,バイオフィードバックを併用した1例

○及川 ひかり1、原田 由香2、野末 真司2、石黒 光哲2、高橋 浩二3,4、伊原 良明2 (1. 昭和大学大学院 歯学研究科 口腔機能リハビリテーション医学分野、2. 昭和大学 歯学部 口腔健康管理学講座 口腔機能リハビリテーション医学部門、3. 医療法人 徳洲会 館山病院 口腔機能リハビリテーションセンター、4. 昭和大学 歯学部)

【緒言・目的】
 頭頸部癌患者における重複癌の発生率は比較的高く,治療期間が長期にわたることが少なくない。また,頭頸部癌への放射線化学療法は,唾液分泌障害や筋の線維化などにより摂食嚥下障害の原因となることがしばしばある。今回,下咽頭癌・食道癌への放射線化学療法後の摂食嚥下障害のため,濃厚流動食のみ経口摂取していた患者へ間接訓練,バイオフィードバックを併用した直接訓練にて常食摂取が可能となった1例を経験したため,報告する。
【症例および経過】
 患者は76歳男性。当学頭頸部腫瘍センターにて下咽頭癌・食道癌(cT4N0M0)と診断され,2022年4月に放射線化学療法を施行した。6月に退院し,食事中のむせを主訴に当科を受診。初診時には濃厚流動食のみ経口摂取していた。摂食嚥下機能評価にて排出機能の低下を認め,嚥下造影検査(VF),嚥下内視鏡検査(VE)にて咽頭クリアランスの低下および嚥下後誤嚥を認めた。間接訓練として頭部挙上訓練と喀出訓練を指導した。患者の負担とモチベーション維持のため訓練頻度と回数を調整した。その後,ペースト食を用いた直接訓練を開始した。中間のトロミのお茶またはゼリー飲料との交互嚥下を指導した。経口摂取に対しての患者の不安感が強く,直接訓練後は患者と共にVEで咽頭の残留部位と量を確認し,残留量が多い場合は喀出を指示した。8月に実施したVFにて嚥下後の咽頭残留量の減少を認め,嚥下後誤嚥は認めなかった。患者と画像の確認し,訓練の成果について共有した。訓練の成果が実感でき,患者の経口摂取に対しての意欲の向上を認めたため,徐々に食形態を上げ,自宅でも濃厚流動食以外に食べやすいものから徐々に経口摂取するよう指導した。10月には常食を経口摂取可能となり,1年以上経過した現在もそれを維持している。
 なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 本症例では頭頸部癌放射線化学療法後の摂食嚥下障害に対し間接訓練,直接訓練を行い,訓練の結果をバイオフィードバックにより可視化することで,患者のモチベーション向上につながったことが食形態の改善に有効であったと考えらえる。また,放射線化学療法の晩期的影響が残存しているにも関わらず,現在も常食の経口摂取が維持できていることから,継続した摂食機能療法を行うことが重要であると考えられた。
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)