一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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症例・施設-1(質疑応答)

2024年6月29日(土) 14:20 〜 15:20 ポスター会場 (大ホールC)

[P-65] 開口困難で食事摂取量が減少した重度認知症患者に対し,歯科訪問診療にて義歯調整を行い体重が増加した症例

○堤 康史郎1,2、柏崎 晴彦2 (1. 医療法人福和会、2. 九州大学大学院歯学研究院 口腔顎顔面病態学講座 高齢者歯科学・全身管理歯科学分野)

【緒言・目的】
 令和4年版高齢社会白書によると,65歳以上の要介護認定者はおよそ470万人で,その内介護が必要になった主な原因は,認知症が18.1%と最も多い。また,認知症患者は日常生活に介助が必要で,歯科訪問診療による介入は必要とすることが多い。今回,開口困難で食事摂取量が減少した重度認知症患者に対し,歯科訪問診療にて義歯調整を行い,良好な経過を得た1例を経験したので報告する。
【症例および経過】
 初診時90歳の女性。要介護5で介護付き有料老人ホームに入居中。アルツハイマー型認知症,変形性膝関節症の既往あり。2021年2月,前医より担当を引き継ぎ介入を続けていた。2023年8月,施設職員より,入院により減少した体重を戻そうと食事介助をしていたが,開口困難で難渋しているので診て欲しいと依頼された。口腔外所見:身長157.6㎝,体重43.5㎏。日常生活動作は全介助。治療に対しては非協力的。開口度は1横指程度。口腔内所見:残存歯は上顎に10本,下顎総義歯を所持していたがおよそ3ヶ月使用していなかった。食形態はペースト食で摂取量は5割程,水分に濃いとろみであった。2023年9月,家族より胃瘻や経管栄養を希望しなかったため,下顎義歯を調整して経口摂取しやすくした。スプーンの先が口腔内に入るように5┐から┌5まで人工歯を除去し,4┐から┌4までの唇側・頬側部の床を削合し,施設職員に義歯使用による食事介助法について指導した。調整1週間後,施設職員より,食事介助が容易になり,摂取量はほぼ10割取れていると報告を受けたため,以降,隔週にて歯科衛生士による口腔衛生管理と歯科医師による残存部・義歯使用を確認しつつ口腔内環境を維持している。同年12月の体重測定時,46.0kgまで増加した。
 なお,本報告の発表について患者家族より文書による同意を得ている。
【考察】
 本症例では,歯科訪問診療において,開口困難で食事摂取量が減少した重度認知症患者に対し,経口摂取しやすくするための義歯調整を行い,摂取量が増加した結果,3か月間で体重が2.5kg増加した。この症例をきっかけに,施設入居者全員の食事観察を行い,経口摂取が維持できるように深く関わって行きたい。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)