一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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症例・施設-1(質疑応答)

2024年6月29日(土) 14:20 〜 15:20 ポスター会場 (大ホールC)

[P-67] 癌終末期患者への口腔健康管理と摂食支援の多職種連携~脳出血により偽性球麻痺を呈した歯肉癌患者の一例~

○小山内 奈津美1、原田 千明1 (1. 津軽保健生活協同組合 健生病院)

【緒言,目的】
 癌終末期患者において,Trousseau症候群等脳血管疾患の合併は予後に影響をきたす他,障害の程度や原疾患の進行に応じた支援が求められる。そのため,方針決定に難渋する事があるが,介入や経過についての報告は多くはない。今回,脳出血により偽性球麻痺を呈した癌終末期患者に対して,多職種が連携し口腔健康管理と摂食支援を行った。介入内容と経過を報告する。
【症例および経過】
 93歳,女性。右視床出血(Ⅹ年Y月Z日)。
現病歴:X-1年頃,他院口腔外科にて左上顎歯肉癌と口唇の扁平上皮癌の診断を受け,当院緩和ケア外来に紹介後,外来通院にて内服治療を継続していた。X年Y月Z日昼頃,左上下肢麻痺の症状が出現し,右視床出血の診断にて当院に入院となった。
初回時所見(1-4病日):口腔状態:OHAT-J12点(口唇2点,舌1点,歯肉/粘膜2点,唾液2点,義歯2点,口腔清拭1点,歯痛2点) コミュニケーション:意識障害(JCS3),見当識障害,左側の口唇と舌の運動麻痺,軽度のディサースリアを認めた。嚥下機能:藤島Gr4,RSST1回,MWST評価4,水飲みテスト段階2,FT評価4,水分は薄いトロミが必要であった。
経過:2病日:DHが口腔評価を実施した。5病日: 看護師と歯科衛生士(以下DH)は,疼痛緩和目的にキシロカインハチアズレ含嗽水による口腔ケアを開始し,1 日1回のゼリーでの直接訓練や発語器官運動等の間接訓練を言語聴覚士(以下ST)が開始した。9病日:意識障害の改善に伴い,看護師によるゼリー等での直接訓練を開始した。口腔内の疼痛は改善したが,食思不振や口腔期障害を認めたため,嚥下機能や食思不振に応じた肢位や食事内容をカンファレンスにて検討した。27病日:口唇の扁平上皮癌が剥離し,摂食中の疼痛が増強したため,薬剤師の助言のもと摂食前にキシロカインハチアズレ含嗽水を使用し疼痛緩和を図った。34病日:藤島Gr7, OHAT-J7点,内服による疼痛コントロールが可能となり療養型病院へ転院となった。
 なお,症例報告にあたり,本人及びその家族に対して本報告の目的と意義,個人情報の取り扱いについて口頭で説明し同意を得ている。
【考察】
 本症例は癌に伴う疼痛や食思不振,偽性球麻痺による嚥下障害により口腔ケアや摂食に難渋したが,多職種での支援介入の結果,嚥下機能と口腔状態が改善した。癌終末期と脳血管疾患併発例では,癌の進行や嚥下障害の重症度に留意し,患者のニーズに応じた支援が必要である。
COI 開示:なし
倫理審査対象外