一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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症例・施設-1(質疑応答)

2024年6月29日(土) 14:20 〜 15:20 ポスター会場 (大ホールC)

[P-68] 骨盤骨折で入院した患者がサルコペニアによる摂食機能障害を認め,多職種連携して自宅退院可能となった症例

○冨田 大一1,2、木村 将典1、多田 瑛1,3、水谷 早貴1,4、天埜 浩太1、大塚 あつ子1、中尾 幸恵1,5、淺野 一信6、谷口 裕重1 (1. 朝日大学歯学部摂食嚥下リハビリテーション学分野、2. おはよう歯科、3. 朝日大学歯学部歯科口腔外科学分野、4. 朝日大学歯学部障害者歯科学分野、5. 医療法人社団登豊会近石病院歯科口腔外科、6. 朝日大学病院栄養管理部)

【目的】
大腿骨骨折患者のうちサルコペニアの有病率は女性で 64%であったと報告されており,術後の嚥下障害の発症は握力や骨格筋量指数と関連すると報告されている。今回,複数回の骨折を繰り返した既往のある患者が骨盤骨折加療目的に当院に入院し,摂食機能障害を認めたが,多職種連携により構音訓練や舌訓練を行った結果,口腔機能,摂食嚥下機能が改善し,自宅退院となった症例を報告する。
【症例および経過】
88歳女性,入院時BMIは23.1kg/m²であった。既往歴に12年前に右大腿骨頸部骨折,5年前に左大腿骨転子部骨折,2年前に左右の上腕骨骨折があった。今回,自宅にて入浴前に嘔気後意識を消失し転倒し,右骨盤骨折のため当院整形外科に入院となった。入院後は軟飯・軟菜食(嚥下調整食4相当)を1~2割程度しか摂取しておらず,水分摂取時にムセが見られたため当科紹介となった。初診時に構音障害を認め,口腔機能精密検査を行ったところ7項目中5項目が該当し,特に舌圧は6.2.kPa,オーラルディアドコキネシス(ODK)はta 3.0/s,ka 3.0/sであった。VE,VFにて,軟飯・米飯摂取時に食塊形成不良,喉頭蓋谷残留を認め、液体は嚥下反射惹起遅延が認められたが,いずれの被検食も喉頭侵入は認めなかった。既往歴に脳梗塞や骨粗鬆症はなく,頻回の骨折を繰り返していたことや,口腔機能,嚥下機能の低下がみられたことから脳神経内科へ対診したが,大きな異常は認めなかった。InBodyを用いて体成分分析を行ったところ,SMI4.0であったことからサルコペニアによる口腔機能低下,摂食嚥下障害の可能性が高いと考えらえた。低栄養に対して管理栄養士と連携して栄養量増加を図り,構音障害,口腔機能低下症に対しては病棟看護師と連携し,イラストを用いた舌訓練,発声訓練を行った。徐々に口腔機能の改善を認め,退院時には舌圧20.3kPa,ODKはta 4.0/s,ka 3.4/sに改善された。
【考察】
入院時のBMIは軽度肥満であったが,既往歴や現症から,脳神経内科への対診や体成分分析を実施したことでサルコペニアによる口腔機能,嚥下機能の低下の可能性が高いと判断し,リハビリ計画を立案することができた。また,その計画に沿って多職種が連携してリハビリを行ったことで自宅退院可能となったと考えられる。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)