一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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口腔機能-4(質疑応答)

2024年6月30日(日) 10:40 〜 11:40 ポスター会場 (大ホールC)

[P-70] 周術期口腔機能管理対象患者の術前後における口腔機能の推移と関連因子の検討

○中島 純子1、酒井 克彦1、鈴木 美紅2、財津 愛2、大屋 朋子2、松浦 信幸1 (1. 東京歯科大学オーラルメディシン・病院歯科学講座、2. 東京歯科大学市川総合病院 コ・デンタル部)

【目的】
 急性期病院の入院患者では、活動性の低下、疾患および栄養低下による二次性サルコペニアが生じ、退院時に病態は改善されても入院前よりADLが低下することもある。周術期の患者に対して行われる周術期口腔機能管理では、口腔衛生状態の維持とともに口腔機能の維持や回復も重要視されているが、周術期前後における口腔機能の変化に関する報告は少ない。本研究では、がん等の手術目的に入院加療を行った患者の術前、退院後の口腔機能およびサルコペニア、フレイルの状態の変化を調査し、口腔機能の変化に関連する因子の検討をおこなった。
【方法】
 対象は2021年11月から2023年3月までに周術期口腔機能管理依頼で、当院歯科口腔外科を受診し外科手術を行った患者のうち、本研究参加に同意が得られた156名(男性101名、女性55名、平均年齢75.8±5.5歳)とした。手術前日および手術後3カ月に口腔機能検査(TCI、口腔湿潤度、残存歯数、オーラルディアドコキネシス、舌圧、スコア法による咀嚼能率、EAT10)、骨格筋量、握力、6m歩行速度の測定および、基本チェックリストを用いたフレイルの調査を行い、術前後の口腔機能低下症の有無、サルコペニアの有無(AWGS2019)および、フレイルとの関連を統計学的に検討した。
【結果と考察】
 術前に口腔機能低下症の診断基準を満たした患者は67名、このうち22名は術3カ月後には口腔機能低下症の基準を満たさなかった。術3か月後に口腔機能低下症を認めた患者は50名であり、うち15名は術前には機能低下を認めなかった。術前術後ともに、サルコペニアの有無は口腔機能低下症の診断に有意に関連し、口腔機能低下症の有無群間で、基本チェックリストの口腔と閉じこもりの項目を除いた項目の該当数に有意差を認めた(平均該当項目数:術前口腔機能低下有群 5.2項目、術前無群:3.7項目、術後有群:5.9項目、術後無群:4.1項目)。重回帰分析の結果、口腔機能低下症の有無は、基本チェックリストの抑うつ状態との関連が高く、周術期口腔機能管理において特に留意すべき対象者と思われた。
(COI開示:なし、東京歯科大学市川総合病院倫理審査委員会承認番号 I 20-54)