一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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口腔機能-4(質疑応答)

2024年6月30日(日) 10:40 〜 11:40 ポスター会場 (大ホールC)

[P-71] 粘稠性唾液の貯留を主訴に他科から紹介され、薬剤性味覚障害も付随していた症例

○岡澤 仁志1、大岡 貴史1 (1. 明海大学歯学部機能保存回復学講座摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【緒言・目的】
 味覚障害を訴え外来受診する患者は24万人を超え,毎年増加傾向にある。特に高齢者は加齢変化,様々な疾患やそれに伴う内服により味覚障害の症状を呈する可能性がある。今回粘稠性唾液の口腔内貯留を主訴に当院口腔外科を受診し,その後味覚障害の主訴により当科へ紹介された1 例を経験したので報告する。
【症例および経過】
 74 歳女性。頸部損傷、リウマチ,高血圧,鬱の既往あり。2022年9 月ころより左側口腔内に粘稠性及び泡沫性唾液の貯留を認め,近隣耳鼻咽喉科を受診するも原因不明であり,2023年3月当院歯科口腔外科を受診し、口腔機能の評価を目的として当科への紹介となった。身長150㎝,体重36㎏,BMI16。神経質な性格により交感神経優位の状態がみられ,眠剤等服用歴もあり。顔貌は左右対称,挺舌は赤唇部を超え,左右運動は可動域制限を認めない。口腔内所見は34~36に欠損を認めるが義歯は使用していない。泡沫状の唾液が軟口蓋及び左側に貯留していた。その他所見については嚥下困難感,味覚異常が認められた。口腔機能検査を行ったところ,舌圧,咀嚼能率,オーラルディアドコキネシス,EAT-10において基準値以下を認めた。またZn値を確認したところ55㎍/dlであった。本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
薬剤の減量や変更を依頼し、Znサプリメントの服用,低栄養については高カロリー食の処方を依頼したところ体重は3か月で4kg増加し,低栄養状態は改善した。Zn値は100まで改善し味覚についてはVASで4~5程度の回復が見られた。粘調唾液の貯留感については義歯を補綴科で作成したことにより一定の改善が見られた。寿命の延長により複数疾患を有する患者が増え,それに伴う治療のための多剤併用は日常となっている。それにより唾液の分泌障害や味覚障害が副作用として見られることも多々ある。本症例のように味覚障害や口腔感覚の障害が体重の低下や免疫力の低下を招いており、早期発見し,調整することも重要である。
( COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)