The 35th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター発表) » 口腔機能-4

口腔機能-4(質疑応答)

Sun. Jun 30, 2024 10:40 AM - 11:40 AM ポスター会場 (大ホールC)

[P-74] 咳ツボ刺激と咳反射の関連性

○原 良子1、中根 綾子1,2、斎藤 美都子1、 Sirinthip Amornsuradech1、戸原 玄1 (1. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野、2. JCHO東京新宿メディカルセンター 歯科・歯科口腔外科)

【目的】
 咳反射は誤嚥性肺炎予防のための重要な機能であるが、高齢者では気道防御反射の低下に伴う喀出力の低下が多く観察される。この研究は咳反射に関わる感覚神経の機能を賦活化させ、咳反射を改善することにある。外耳道には迷走神経知覚枝の分枝(アーノルド神経)が分布し、外耳道への刺激は迷走神経を介して咳を誘発するArnold’s ear-cough reflexが知られる。そこで、高齢者に対してアーノルド神経走行上に機械的刺激(指圧)を用い、咳反射の改善を検討した。
【方法】
 対象者は施設入所高齢者62名(男性10名、女性52名)で、左後耳介下方部の指圧を行った。アーノルド神経走行上での後耳介下方部の指圧(以下咳ツボ刺激)による効果の有無を検討するため、咳ツボ刺激前後で咳テストを行った。咳ツボ刺激は1回目の咳テスト終了後、3秒間3回快圧で行った。咳ツボ刺激開始から10秒間の咳を即時効果とみなし、咳誘発時間を記録した。2回目の咳テストはクエン酸の影響を考え、1回目終了3分後に行った。咳テストはネブライザ(NE-U22 Handy Type Mesh Nebulizer、 Omron Co., Kyoto, Japan) にて施行し、咳反射(咳誘発時間・咳回数)を評価した。咳誘発時間は曝露開始から最初の咳が生じるまでの時間を最大1分間記録し、咳回数は5回カウントされた時点で終了した。介入前後の比較にはWilcoxon signed-rank testを用いた。また、基礎情報(年齢、性別、BMI、BI、既往歴、現病歴、MMSE、服用薬)を施設記録から参照した。
【結果と考察】  
 参加者の平均年齢は87.7±6.3歳で、女性が83.9%であった。咳誘発時間は介入前13.4±13.3、介入後10.1±10.9で、介入前後で有意に短縮した(p=0.024)。咳回数は介入前4.6±1.0、介入後4.7±0.9で有意に増加した(p<0.01)。また、咳ツボ刺激中・刺激直後に咳が出た者は3名であり、共通する特徴は認められなかった。指圧とは疾病の治療や予防を目的とし、自然治癒力を促進させる手技療法と定義される。施設入所高齢者における咳ツボ刺激は非侵襲的であり、特別な準備や摂食嚥下訓練が不要で、有用な手法と考える。
東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会 
承認番号D2021- 086
(COI開示無し)