一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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口腔機能-4(質疑応答)

2024年6月30日(日) 10:40 〜 11:40 ポスター会場 (大ホールC)

[P-75] 千葉県柏市開業歯科医院における通院患者の口腔機能低下症についての実態調査

○小池 丈司1,2,3、野末 真司2、林 皓太2,3、伊原 良明2 (1. 豊春MJ歯科クリニック、2. 昭和大学歯学部口腔健康管理学講座口腔機能リハビリテーション医学部門、3. かしわ歯の国総合歯科・矯正歯科本院)

【目的】
 今回われわれは地域在住高齢者の口腔機能の実態および特徴を把握するために、千葉県柏市の開業歯科医院に通院中の65歳以上の患者を対象に口腔機能精密検査を行ったので,報告する。
 【方法】
 2021年4月から2023年3月に柏市の開業歯科医院に通院中の65歳以上の患者37名に実施された口腔機能精密検査(舌苔の付着程度,口腔粘膜湿潤度,残存歯数,オーラルディアドコキネシス(パ、タ、カ)、舌圧検査,咀嚼能力検査,嚥下スクリーニング検査(EAT-10))の結果から,後方視的に調査を行った。口腔機能低下症と診断されたものを低下群14名と口腔機能低下症と診断されなかったものを対照群23名に群分けし,その結果は統計学的手法を用いて分析した。
【結果と考察】
 年齢で低下群は平均80.6歳(72-90歳)であり,対照群は平均72.3歳(65-81歳)であり,対照群と比較して低下群の方が有意に高齢であった。また,舌苔の付着程度で低下群は平均38.6%で対照群は平均27.5%であり,対照群と比較して低下群の方が有意に多かった。オーラルディアドコキネシスの「パ」で低下群は5.7回/秒,対照群は6.4回/秒、「タ」で低下群は5.6回/秒,対照群は6.4回/秒、「カ」で低下群は5.2回/秒,対照群は5.9回/秒であり、ともに対照群と比較して低下群の方が有意に少なかった。舌圧で低下群は28.6kPa,対照群は33.2kPaであり,対照群と比較して低下群の方が有意に低かった。EAT-10で低下群は4.7点、対照群は0.4点であり,対照群と比較して低下群の方が有意に高かった。それ以外の評価項目では2群について有意な差を認めなかったが,咀嚼能力検査で100mg/dl未満のものは低下群で5名,対照群で2名であった。本研究の結果は舌苔の付着程度、オーラルディアドコキネシス、舌圧、EAT-10において低下群で有意な機能低下を示唆するものであった。しかし、咀嚼機能では有意差を認めなかった。本研究は対象の人数が少数であり,今後対象者を増やして検討する必要がある。また,両群の年齢に差があることから,口腔機能低下症は65歳以上という区切りのみではなく、より実態に即した評価基準が必要である可能性が考えられる。
(COI開示:なし)
(昭和大学 倫理審査委員会承認番号 2023-072-B )