一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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その他(質疑応答)

2024年6月30日(日) 10:40 〜 11:40 ポスター会場 (大ホールC)

[P-76] 在宅で暮らす高齢者の主観「何でもよくかんで食べられる」評価の検証

○森野 智子1 (1. 京都光華女子大学短期大学部 歯科衛生学科)

【目的】
 高齢者の口腔機能が健康寿命やQOLと関係することから,その維持向上に注目が集まっている。歯科医療従事者不在時に用いられる咀嚼能力評価に主観「何でもよくかんで食べられる」がある。本研究では,主観評価の正当性を検証するために主観「何でもよくかんで食べられる」を持つ在宅で生活する健常高齢者の口腔機能を測定し,咀嚼能力(グルコセンサー)との関連性を検討するとともに他の調査項目との関連性についても検討した。
【方法】
 研究の目的と方法に同意した主観「何でもよくかんで食べられる」を持つ在宅で生活する健常高齢者63人(男31人,女32人,平均年齢74.4±5.1歳)の口腔機能等(年齢,性別,舌苔付着度,残存歯数,口腔粘膜湿潤度「ムーカス」,オーラルディアドコキネシス「健口くんハンディ」,舌圧「JMS舌圧測定器」,咀嚼能力「グルコセンサー」,簡易栄養状態評価表,握力)を調べた。初めに対象者の属性および各調査項目値を整理して,項目間の関連を調べた。次に咀嚼能力と関連する項目を調べるために,咀嚼能力を従属変数,その他の項目を独立変数として,重回帰分析を用いて検討した。舌圧についても同様に検討した。
【結果と考察】
 舌苔付着度の平均は5.2±8.6%と低く,残存歯数の平均は24.8±5.5本で20本を上回っていた。口腔粘膜湿潤度の平均は28.4±2.3,オーラルディアドコキネシス /Pa//Ta//Ka/の平均はどれも6.0回を上回っていた。舌圧の平均は29.4±7.3kPa,咀嚼能力の平均は196.7±58.1,中央値が191.0と高く維持されていた。簡易栄養状態評価表の平均は12.8±1.3点,握力の平均は28.1±7.6kgであった。重回帰分析で咀嚼能力と関連する測定項目を調べたところ(重相関係数は0.70)抽出された項目は残存歯数(p≦0.01)と握力(p≦0.01)であった。同様に舌圧を調べたところ抽出された項目は咀嚼能力(p≦0.05)であった。咀嚼に必要な舌運動が舌圧維持に役立っていると推察する。以上のことから,主観で自身の咀嚼に満足している高齢者の口腔機能は全体に良好で,咀嚼能力も高く維持されていたことから,歯科医療従事者不在の場で用いられる咀嚼の主観的評価には一定の信頼性が期待できることが分かった。
(COI 開示:なし)
(静岡県立大学 倫理審査委員会承認番号 4−24)