[P-80] 可撤性インプラント義歯装着患者についての検討
【目的】
無歯顎患者に対して1~2本のインプラントを支台として用いるインプラントオーバーデンチャー(以下IOD)やインプラントを部分床義歯の支持や維持に利用するimplant-assisted removable partial denture(以下IARPD)は、従来の総義歯や部分床義歯に比し咀嚼機能や患者満足度の向上をもたらし、また固定性インプラント補綴に比し低侵襲、経済性に優れるなど多くの利点を有する補綴方法である。これらの可撤性インプラント義歯は高齢者の口腔機能向上に有益であり、適用症例も増加傾向にあるが、本邦においては長期の臨床報告が非常に少ない。今回、本治療を適用した70歳以上の高齢患者について検討を行ったのでその概要を報告する。
【方法】
2003年~2021年に当科においてIODないしIARPD治療を行い、1年以上の経過観察を行った手術時70歳以上の患者32名について、診療録を用いて、年齢・性別、既往歴、内服薬、治療内容、インプラント周囲炎の有無や喪失、全身状態の変化等を調査した。
【結果と考察】
IOD群は22名、ISRPD群は10名であった。性別は男性11名、女性21名で、年齢は70~93歳、平均77.9歳であった。観察期間は19~175か月で平均98.4か月であった。既往歴は高血圧症が15名、脳血管疾患が9名などであった。主な内服薬は抗血栓薬が5名、ビスホスホネート薬(以下BP薬)が2名などであった。IOD群ではインプラントはすべて下顎に使用されており、1本が6名、2本が16名であった。IARPD群では下顎に8名、上下顎に2名で使用されていた。インプラント周囲炎ないし周囲粘膜炎が生じたものはIOD群、IARPD群ともに6名で、IARPD群では高頻度であったが、インプラントの喪失に至ったものはIARPD群の1名のみであった。治療後の経過についてみると、新たにBP薬内服が開始された例や認知症を発症した例などが散見された。以上より、IOD治療は概ね経過良好なものが多く長期の安定性が望めるが、IARPD治療はインプラント周囲炎等に罹患する頻度も高く、適応を十分考慮する必要があると考えられた。一方でメインテナンスの継続には患者および患者家族への啓発やシームレスな医療連携の構築が重要であると考えられた。(COI開示:なし。新潟中央病院倫理委員会承認番号et2023-8)
無歯顎患者に対して1~2本のインプラントを支台として用いるインプラントオーバーデンチャー(以下IOD)やインプラントを部分床義歯の支持や維持に利用するimplant-assisted removable partial denture(以下IARPD)は、従来の総義歯や部分床義歯に比し咀嚼機能や患者満足度の向上をもたらし、また固定性インプラント補綴に比し低侵襲、経済性に優れるなど多くの利点を有する補綴方法である。これらの可撤性インプラント義歯は高齢者の口腔機能向上に有益であり、適用症例も増加傾向にあるが、本邦においては長期の臨床報告が非常に少ない。今回、本治療を適用した70歳以上の高齢患者について検討を行ったのでその概要を報告する。
【方法】
2003年~2021年に当科においてIODないしIARPD治療を行い、1年以上の経過観察を行った手術時70歳以上の患者32名について、診療録を用いて、年齢・性別、既往歴、内服薬、治療内容、インプラント周囲炎の有無や喪失、全身状態の変化等を調査した。
【結果と考察】
IOD群は22名、ISRPD群は10名であった。性別は男性11名、女性21名で、年齢は70~93歳、平均77.9歳であった。観察期間は19~175か月で平均98.4か月であった。既往歴は高血圧症が15名、脳血管疾患が9名などであった。主な内服薬は抗血栓薬が5名、ビスホスホネート薬(以下BP薬)が2名などであった。IOD群ではインプラントはすべて下顎に使用されており、1本が6名、2本が16名であった。IARPD群では下顎に8名、上下顎に2名で使用されていた。インプラント周囲炎ないし周囲粘膜炎が生じたものはIOD群、IARPD群ともに6名で、IARPD群では高頻度であったが、インプラントの喪失に至ったものはIARPD群の1名のみであった。治療後の経過についてみると、新たにBP薬内服が開始された例や認知症を発症した例などが散見された。以上より、IOD治療は概ね経過良好なものが多く長期の安定性が望めるが、IARPD治療はインプラント周囲炎等に罹患する頻度も高く、適応を十分考慮する必要があると考えられた。一方でメインテナンスの継続には患者および患者家族への啓発やシームレスな医療連携の構築が重要であると考えられた。(COI開示:なし。新潟中央病院倫理委員会承認番号et2023-8)