一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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その他(質疑応答)

2024年6月30日(日) 10:40 〜 11:40 ポスター会場 (大ホールC)

[P-81] 歯科外来通院中の認知機能低下患者における栄養素・食品摂取状況の特徴

○福本 陽香1、井上 良介1、水谷 慎介1,2、藤原 晶子1、柏﨑 晴彦1 (1. 九州大学大学院歯学研究院口腔顎顔面病態学講座高齢者歯科学・全身管理歯科学分野、2. 九州大学大学院歯学研究院附属OBT研究センター)

【目的】
 簡易自記式食事歴法質問票(BDHQ)を用いた栄養素・食品摂取状況と口腔機能との関連性を示した研究は数多く報告されているが,認知機能低下との関連を調べた研究は少ない。本研究は歯科外来通院中の高齢者を対象として,口腔機能,BDHQによる栄養・食品摂取状況,および認知機能の評価を行い,認知機能が低下している高齢者における栄養素・食品摂取状況の特徴を探索することを目的した。
【方法】
 定期的な口腔管理を目的として通院中の65歳以上の高齢者28名(男性13名ー,平均年齢72.5歳)を対象とし,Body Mass Index (BMI),口腔機能精密検査,MoCA-Jによる認知機能検査およびBDHQによる栄養素・食品摂取状況に関する調査を行った。MoCA-Jにより25点以下を認知機能低下群とし,口腔機能および栄養素・食品摂取状況について,正常群との比較を行った。統計学的な分析にはMann-Whitney testおよびχ二乗検定を用いた。
【結果と考察】
 MoCA-Jによる認知機能低下群は9名(30%)であった。正常群, 認知機能低下群のBMI(中央値)はそれぞれ21.1,22.4であり有意な差は認められなかった(P>0.05)。総タンパク質の摂取量(中央値)はそれぞれ79.8g,55.0gであり,統計学的にみて2群間に有意な差が認められ(P<0.05),n-3系脂肪酸(P=0.001),n-6系脂肪酸(P=0.003)の摂取量が有意に高かった。さらには,鉄,亜鉛,銅,マンガンのミネラル類やビタミンB1,B2,B6,B12,C,Dの摂取量においても,正常群が多く摂取していた(すべてP<0.05)。一方で,グルコセンサーによる咀嚼機能検査値および残存歯数などの口腔機能精密検査結果では,2群間において有意な違いは認められなかった。2群間において,咀嚼機能と残存歯数に違いは認められなかった。栄養素・食品摂取状況では違いが認められた。このことから食品に含まれる神経保護作用,抗酸化作用や認知機能に影響を与える可能性のある魚類,ミネラル類,ビタミン類の摂取量と認知機能との関連が示唆された。歯科医院において,口腔機能の評価に加え,栄養評価および指導を行うことは認知機能低下を予防する観点から重要である可能性が示唆された。
(COI 開示:なし)
(九州大学倫理専門委員会承認番号21029-01)