[P-83] 口腔機能に関連する要因が食欲に及ぼす影響
【目的】
加齢による食欲低下は,低栄養,サルコペニア,全身機能低下および疾患罹患率や死亡率とも関連するため(Adam Wysokiński,2015),予防もしくは改善する方法が望まれている。その解決の一助として口腔の健康状態と食欲低下との関連が推察されているが,その詳細は不明な点が多い。そこで,本研究は食欲低下と口腔機能との関連に注目した。
【方法】
2021年7月から2022年9月の間にM県K市の歯科診療所を受診した患者71名(男性22名・女性49名,66.0±14.0歳)を対象とした。調査項目は質問紙調査としてCNAQ,EAT-10,MNA-SF,口腔機能低下症の診断基準に従い口腔機能検査の6項目を計測し,自覚症状はオーラルフレイルの質問項目を参考に7項目を聴取した。解析は性別,年齢,口腔機能検査および自覚症状と食欲低下の関連を比較し,χ2 検定,Fisherの直接法を用いて検定した。さらに,食欲を目的変数,性別・年齢・口腔機能検査および自覚症状を説明変数とする単変量および多変量ロジスティック回帰分析を実施した。
【結果】
χ2 検定で食欲正常群と低下群に有意差がみられたものは,EAT-10と質問票の「食物の口腔内残留感」であった(p<0.05)。食欲を目的変数とした単変量二項ロジスティック回帰分析では,咀嚼機能とEAT-10および質問票の「食物の口腔内残留感」の項目が有意差を認め,多変量二項ロジスティック回帰分析では咀嚼機能とEAT-10で有意差を認めた。咀嚼機能が正常な者と比較して低下した者の調整オッズ比は4.4 (p=0.045)であった。EAT-10が基準値以下の者と比較した基準値以上の者の多変量オッズ比は6.3 (p=0.016) であった。
【考察】
咀嚼機能や嚥下機能の低下と食欲低下が関連していた。過去の報告を参考にすると,この咀嚼機能低下および食欲低下が全身機能低下,低栄養,疾患罹患率上昇,死亡率上昇に繋がる可能性が考えられる(Cox NJ,2020)。そのため,咀嚼機能を向上することが,食欲の改善および全身機能低下の予防に寄与することが推察される。本研究より咀嚼機能および嚥下機能の維持・向上が,食欲の維持・改善に影響を及ぼす可能性が示唆された。
(COI開示:なし)
(朝日大学歯学部倫理審査委員会承認番号:32036)
加齢による食欲低下は,低栄養,サルコペニア,全身機能低下および疾患罹患率や死亡率とも関連するため(Adam Wysokiński,2015),予防もしくは改善する方法が望まれている。その解決の一助として口腔の健康状態と食欲低下との関連が推察されているが,その詳細は不明な点が多い。そこで,本研究は食欲低下と口腔機能との関連に注目した。
【方法】
2021年7月から2022年9月の間にM県K市の歯科診療所を受診した患者71名(男性22名・女性49名,66.0±14.0歳)を対象とした。調査項目は質問紙調査としてCNAQ,EAT-10,MNA-SF,口腔機能低下症の診断基準に従い口腔機能検査の6項目を計測し,自覚症状はオーラルフレイルの質問項目を参考に7項目を聴取した。解析は性別,年齢,口腔機能検査および自覚症状と食欲低下の関連を比較し,χ2 検定,Fisherの直接法を用いて検定した。さらに,食欲を目的変数,性別・年齢・口腔機能検査および自覚症状を説明変数とする単変量および多変量ロジスティック回帰分析を実施した。
【結果】
χ2 検定で食欲正常群と低下群に有意差がみられたものは,EAT-10と質問票の「食物の口腔内残留感」であった(p<0.05)。食欲を目的変数とした単変量二項ロジスティック回帰分析では,咀嚼機能とEAT-10および質問票の「食物の口腔内残留感」の項目が有意差を認め,多変量二項ロジスティック回帰分析では咀嚼機能とEAT-10で有意差を認めた。咀嚼機能が正常な者と比較して低下した者の調整オッズ比は4.4 (p=0.045)であった。EAT-10が基準値以下の者と比較した基準値以上の者の多変量オッズ比は6.3 (p=0.016) であった。
【考察】
咀嚼機能や嚥下機能の低下と食欲低下が関連していた。過去の報告を参考にすると,この咀嚼機能低下および食欲低下が全身機能低下,低栄養,疾患罹患率上昇,死亡率上昇に繋がる可能性が考えられる(Cox NJ,2020)。そのため,咀嚼機能を向上することが,食欲の改善および全身機能低下の予防に寄与することが推察される。本研究より咀嚼機能および嚥下機能の維持・向上が,食欲の維持・改善に影響を及ぼす可能性が示唆された。
(COI開示:なし)
(朝日大学歯学部倫理審査委員会承認番号:32036)