The 35th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター発表) » 連携医療・地域医療-3

連携医療・地域医療-3(質疑応答)

Sun. Jun 30, 2024 10:40 AM - 11:40 AM ポスター会場 (大ホールC)

[P-85] 患者家族が日常の変化に気づき病診連携を行い全顎抜歯インプラント除去後に上下総義歯に移行した症例

○中井 久1、寺本 祐二2、片山 実悠1、葛島 良紀4、稲田 信吾3 (1. 中井歯科医院、2. 寺本歯科医院、3. いなた歯科クリニック、4. きらり歯科)

【緒言・目的】
 インプラント治療後メンテナンスを受けていない高齢者が散見される。またBP製剤や抗凝固剤を内服している高齢者は多いが、口腔内環境の悪化を放置する高齢者も多い。今回患者家族が変化に気づき、他院施行インプラントのメンテナンスを受けていない老年患者に対して病診連携を行い、外科処置後に補綴を担当した1例を報告する。
【症例および経過】
 患者は87歳男性、妻・娘の3人暮らし。主訴は家族より1日中チューチューと吸う音が聞こえる。既往歴は20年前軽度脳梗塞半年前に背中圧迫骨折、軽度認知症で抗凝固剤・BP製剤内服中である。口腔内所見は16から24にかけて固定式ブリッジ、36.37部インプラント、44.45.46に連結全部鋳造冠、25.26及び35から43の欠損部に局部床義歯が装着されていた。残存歯すべての歯周ポケットで排膿を認めた。主訴は絶えず排膿を気にしていたことに起因するものと考え消炎処置後、抜歯・インプラント除去の必要性を説明した。患者はショックな様子で家族は抜歯での体力面を心配していた。セカンドオピニオンも兼ね口腔外科を受診し本人も了承した。口腔外科で静脈鎮静下にてインプラント除去、全顎抜歯が施行された。退院後経過良好で主訴は改善された。無歯顎となったことから当院にて上下総義歯を作製し装着した。装着1週間後に家族より咀嚼スピードが遅くほとんど飲み込んでいるとの指摘や患者自身が食後に義歯の装着の仕方が分からなくなったりした。患者本人及び家族に説明を繰り返しながら義歯の調整を行った。装着2ヶ月後口腔機能検査で初めてグミが2分割できた。装着3ヶ月後には支障なく食事が可能になり患者及び家族の満足が得られた。なお、本報告の発表について患者本人から同意を得ている。
【考察】
 インプラント治療を受けた患者は増加している。高齢患者及び家族がインプラント治療に十分な知識を有していないことが多い。またBP製剤の投与と口腔衛生に関する知識が十分でなく、観血処置が必要な場合抗凝固剤を内服していることがリスクとなる。口腔と全身疾患及び薬剤との関連、治療の予後についての説明は必須である。医科歯科連携・病診連携を通して患者の現状を把握し、患者家族への説明を適切に行うことが信頼関係の構築に繋がる。予後を考慮した対応が老年歯科医療において重要となる。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)(発表について患者の同意を得た)