一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

講演情報

一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター発表) » 連携医療・地域医療-4

連携医療・地域医療-4(質疑応答)

2024年6月30日(日) 10:40 〜 11:40 ポスター会場 (大ホールC)

[P-90] 地域中核病院における歯科・口腔外科の現状と今後について

○中尾 幸恵1、森田 達1、荒屋 千明1、多田 瑛2,3、近石 壮登1、木村 将典2、谷口 裕重1,2 (1. 医療法人社団登豊会近石病院 歯科・口腔外科、2. 朝日大学歯学部 摂食嚥下リハビリテーション学分野、3. 朝日大学歯学部 口腔外科学分野)

【目的】
 入院患者に対する口腔管理の重要性は認識されつつあるが,病院のシステム・マンパワー・採算などの理由で歯科が入院患者へ積極的に口腔管理を行っているところは数少ない。当院は病床数125床の地域中核病院であり,2018年11月に歯科・口腔外科が開設され,入院患者の歯科治療や口腔衛生管理など専門的口腔管理を実施できるようになった。歯科・口腔外科開設後に摂食嚥下サポートチーム(SST)も設立され,多職種連携にて入院患者の嚥下精密検査や摂食嚥下リハビリテーションを行っている。今回,当院歯科・口腔外科開設後の入院患者に対する歯科介入の動向を検証するとともに今後の課題について考察する。
【方法】
 診療録と当科データベースを用い,2021年9月から2023年9月までの入院患者を調査対象とした。
【結果と考察】
 入院時,全患者に歯科スクリーニングを実施し,歯科介入が必要であり同意が得られた患者に介入した。入院患者の約8割は専門的口腔衛生管理や義歯調整,抜歯など口腔管理や歯科治療が必要であった。2年間の調査では入院総患者1786人のうち,歯科が介入した患者は約7割であった。入院主疾患は骨折や脳血管疾患,呼吸器疾患が主であり高齢者が多数であった。歯科・口腔外科開設後より歯科衛生士数が増加し,各病棟に1人の衛生士を配置しているため,入院後早期から患者の全身状態・口腔内環境を把握し,歯科介入を行うことができていた。また,摂食嚥下障害患者に対してSSTで介入を行うことで他職種と連携して早期から嚥下機能評価や摂食嚥下リハビリを行うことができ,嚥下精密検査(VE・VF)の総数は2年間で約600件であった。新型コロナウイルス感染流行下においては,入院受け入れの制限があり歯科介入者数や嚥下精密検査数は一時的に減少したが,年間件数はおおむね変化はなかった。本調査によって,歯科・口腔外科開設後から病院内外での当科の活動内容が徐々に認知され,入院患者への積極的な歯科介入を行うことができていることが示唆された。SSTでの介入によって,摂食嚥下障害患者に対しても積極的な情報共有や早期からの摂食嚥下リハビリを行うことができていることが示唆された。また,当科は訪問歯科診療も行っており今後は地域中核病院の歯科・口腔外科として地域のクリニックや歯科医院との連携に注力することが重要であると考える。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)