一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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連携医療・地域医療-4(質疑応答)

2024年6月30日(日) 10:40 〜 11:40 ポスター会場 (大ホールC)

[P-94] 要介護者となった歯科インプラント患者に対する訪問診療の経験

○松原 利江子1、室田 弘二1、馬場 めぐみ1、橋本 みゆき2、先川 信3、寺尾 導子2 (1. 医療法人臨生会 名寄歯科医院、2. 医療法人臨生会 吉田歯科分院、3. 医療法人臨生会 吉田病院歯科口腔外科)

【緒言・目的】
令和4年歯科疾患実態調査によるインプラント装着者は,70歳以上75歳未満で最も多く5.9%であると報告されている。今回われわれは,歯科外来へ受診していた患者が通院困難となった後も口腔健康管理を継続し,口腔機能を維持する一助となった経験を報告する。

【症例および経過】
85歳,男性。検診と歯周病治療を希望し,2016年(77歳)当院初診。既往歴は,陳旧性心筋梗塞のため冠動脈ステント植え込み術,および不安定狭心症に起因する慢性心不全,右変形性膝関節症,関節リウマチのため市内基幹病院外来へ通院していた。また,2013年(74歳)に他院にて歯科インプラントによる治療を受けていた。2021年12月まで継続した歯周病治療で残存歯の管理を行ったが,歩行困難となり要介護認定を受け(要介護2),2022年8月から訪問診療へ移行した。食事中にむせる症状を認めたため,口腔機能精密検査を実施した。ムーカスによる口腔粘膜湿潤度は26.4,舌圧は23.1kPa,グルコセンサーによる咀嚼能力検査は272mg/dlであった。
 口腔機能訓練の様子を動画にしてICTで多職種と共有し,デイケア利用時にも声掛けをして本人へ促すように依頼した。多職種の協力もあり,患者はブラッシングや口腔機能訓練を受け入れ,熱心に取り組むようになった。その後の検査では舌圧が27.4kPaに改善した。体重の増減もほとんど無く,食支援の観点から心不全重症化予防の一因になっていると担当医から報告があった。サービス担当者会議では,口腔機能が維持・向上することでむせる症状も減少し,食事の喜びにつながっているとケアマネジャーから報告があった。
 なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。

【考察】
本症例は,デイケア利用時にもスタッフから舌運動の声掛けや,歯間ブラシなどの補助用具を準備して環境を整える協力が得られたので,本人が継続して取り組むことが可能であったと考えた。また,口腔衛生管理や口腔機能訓練の様子を多職種へ啓発する良い機会となった。
 歯科インプラントを含めた口腔機能の維持が,リハビリテーションと栄養の一分野として食を支え,在宅生活を継続するためにも必要であり,口腔衛生管理などの医療行為に対して適切に評価されることが望まれる。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)