[P-98] 入所知的能力障がい者の窒息事故に関する調査
【目的】窒息事故により年間約8000名が死亡しており,その約半数は食物による事故である。今回,施設入所の高齢知的能力障がい者の窒息事故の実態調査を行うとともに,摂食指導による変化について調査したので報告する。【方法】埼玉県内の某障がい者入所施設に2022年1月から2023年12月までの間に入所していた知的能力障がい者のうち,65歳以上の者28人(男性19人,女性22 人,平均年齢68±7歳)を対象とした。介護記録と診療録より窒息既往,窒息の原因となった食物,現在歯数,義歯の有無,摂食機能評価結果,食形態,摂食指導内容を採取し調査を行った。2022年1月から7月までを介入前の調査期間とし,8月からは摂食指導内容を実行する期間とした。そして,摂食指導前後での窒息事故数や摂食機能評価結果,食形態などを比較検討した。【結果と考察】対象者のうち,窒息既往は22名(79%)に認め,原因食物はパンなどの主食が多かった。25名(89%)に臼歯部咬合はあるものの,咀嚼機能が残存している者は17名(61%)であった。摂食時の問題としては,ペースが早い,かきこんで食べるなどの自食動作に問題がある者が26名(93%)と多かった。主食は米飯が12名,粥が14名,ミキサー食が2名であり,副食は普通食が9名,一口大が11名,刻み食が5名,ミキサー食が3名であった。摂食指導は全員が受けており,食形態の変更,ペーシング訓練,小分け対応などの介助法の変更などが多くを占めた。窒息事故は介入後に6件(4名)と減少し,窒息事故による死亡や入院となった対象者はいなかった。一方で,食形態は半数以上の対象者で嚥下しやすい形態に変更されていた。また,摂食指導内容を受容できない者,摂食指導内容は実行できているが摂取量の低下や日常生活上の不穏など有害事象が発生した者が3名みられた。知的能力障がい者では自食の問題が非常に高い頻度でみられることが報告されているが,食環境指導や介助法の改善,食形態の変更など代償的アプローチが選択されることが多い。また,これらの対応が窒息事故を減少させられるか不明な部分も多く,今後詳細な検討が必要と考えられる。(COI開示:なし)(明海大学歯学部倫理委員会承認承認番号 A1912)