一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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課題口演1
地域包括ケアシステム

2024年6月29日(土) 08:50 〜 10:10 第3会場 (中ホール)

[課題1-3] 高齢者の肥満関連疾患の発症に歯数は関連するのか?

○白鳥 昇1、長谷川 陽子1,2、徳本 佳奈2、吉村 将悟1、堀 一浩1、新村 健3 (1. 新潟大学医歯学総合研究科包括歯科補綴学分野、2. 兵庫医科大学歯科口腔外科学講座、3. 兵庫医科大学医学部総合診療科)

【目的】高齢者においても肥満関連疾患の予防・管理は重要であり、その進行の抑制には食習慣改善が効果的であることが知られている。良好な咀嚼能力は肥満関連疾患発症リスク低減につながると報告されているが、その原因に栄養摂取状況の変化があると考えた。本研究は高齢者を対象に、咀嚼機能の変化により栄養摂取状況が変わり肥満関連疾患発症リスクが変化するという仮説を検証する。【方法】対象は丹波篠山市在住の自立した65歳以上の高齢者で、2016年6月~2023年12月に実施された学術研究調査に参加した高齢者 (男290名・女598名)とした。初回検診時から2~6年経過後に再調査に参加した189名について追跡調査を実施した。BMI、収縮期血圧(SBP)、随時血糖、中性脂肪の4項目から、肥満・高血圧・高血糖・脂質代謝異常を判定し、対象者を該当項目数から3群に分類した。追跡調査時の該当項目数の変化に基づいて、肥満関連疾患増悪・不変・改善群に分類した。咀嚼機能は、機能歯数(0-28)により評価した。栄養摂取はBrief-type Diet History Questionnaire (BDHQ)から得た総摂取カロリーにより評価した。初回検診時における咀嚼機能と総摂取カロリーおよび肥満関連疾患との関連について、分散分析・相関分析を用いて検討を行った。次に追跡調査時の肥満関連疾患、歯数、総摂取カロリーの3つの関連性について、媒介モデルを作成し仮説の検証を行った。また肥満関連疾患を従属変数としたcox回帰分析を行い、肥満関連疾患と咀嚼機能との関連について検討を行った。【結果と考察】肥満関連疾患群は、非該当群と比較して歯数が有意に少なかった。また肥満関連疾患のうち、BMIとSBPにおいて異常値であった対象者は、そうでない対象者と比較して有意に歯数が少なく、歯数が少ないと総摂取カロリーが高い傾向を認めた。追跡調査時に肥満関連疾患増悪群に該当した対象者は全体の7.4%であり、増悪群には歯数が少ないことが有意に関係していることが示された。 以上の結果から、歯数が少なく高齢者はカロリーを過剰に摂取し、肥満関連疾患発症リスクが増悪することが示唆された。(COI 開示:なし)(兵庫医科大学倫理審査委員会承認番号 倫ヒ0342)(新潟大学倫理審査委員会承認番号 G2021-0027)