The 35th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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課題口演2
口腔機能低下症

Sat. Jun 29, 2024 10:20 AM - 11:40 AM 第3会場 (中ホール)

[課題2-1] 地域在住高齢者の嚥下機能低下がフレイルに及ぼす影響:前向きコホート研究

○翁 恩慈1、善本 佑1、長谷川 陽子1,2、Ma. Therese Sta. Maria 1,3、佐藤 直子1、徳本 佳奈2、堀 一浩1、新村 健4 (1. 新潟大学大学院医歯学総合研究科包括歯科補綴学分野、2. 兵庫医科大学歯科口腔外科学講座、3. マニラ中央大学歯学部補綴学分野、4. 兵庫医科大学医学部総合診療内科学講座)

【目的】
 フレイルの進行には,嚥下機能の低下も要因の1つと考えられている。本研究は,自立した地域在住高齢者を対象に,フレイルの進行に嚥下機能が与える影響を明らかにすることを目的に前向きコホート研究を行った。
【方法】
 対象者は,健康調査に初回(ベースライン)と2年後(フォローアップ)との計2回参加した795人(男性283人,女性512人)の65歳以上高齢者とした。フレイルは基本チェックリストに基づき判定し,フォローアップ時にベースラインと比較して悪化した対象者をフレイル進行群とした。嚥下機能は,①反復唾液嚥下テストが3回未満 ②「お茶や汁物等でむせることがありますか?」との質問に「はい」と回答 ③低舌圧(男性27.4 kPa未満,女性26.5 kPa未満)の3項目中1項目以上該当した場合を,嚥下機能低下と判定した。フレイルへの交絡因子として,口腔機能(機能歯数,咬合力,咀嚼能率,口腔乾燥度),身体の状態と機能(肥満度,歩行速度,握力,骨格筋指数),認知機能を評価した。ベースライン時のフレイル状態およびフォローアップ時のフレイル進行の有無と,嚥下機能または交絡因子との関連についてχ²検定,t検定,一元配置分散分析を用いて検討し,フレイル進行に影響する因子について,ロジスティック回帰分析を用いて検討を行った(p<0.05)。
【結果と考察】
 ベースライン時にフレイルと評価された者は87名(10.9%)で,フォローアップ時に149名(37.9%)にフレイル進行を認め,149名のうち83名(55.7%)はベースライン時の嚥下機能低下が認められた。ベースライン時,フレイルは,年齢,歩行速度,嚥下機能の低下,機能歯数,咬合力,咀嚼能率と有意な関連を認めた。3つの嚥下機能評価法のいずれも,フレイル進行との間に有意な関連は認めなかった。一方、フレイル進行についてロジスティック回帰分析を行った結果,嚥下機能低下の有無が有意な説明変数として選ばれた(OR:1.47,95%CI:1.02~2.12)。
 以上の結果より,高齢者におけるフレイル進行には嚥下機能低下が関与していることが示唆され,嚥下機能判定には複数のスクリーニング方法を組み合わせることが有益であることが推察された。
 (COI 開示:なし)(兵庫医科大学倫理審査委員会承認番号 倫ヒ342)