[SY10-3] ICTやクロスリアリティを活用した新しい歯科教育の可能性
-これからの老年歯科医学に貢献できる人材を育成するために-
![](https://confit-sfs.atlas.jp/customer/gero35/SY10-03.png)
2014年 徳島大学歯学部 卒業
2018年 東京医科歯科大学歯学部附属病院スペシャルケア外来 医員
2019年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野 修了
2020年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野 医員
2021年 同分野 特任助教
2023年 同分野 助教(現職)
日本老年歯科医学会(認定医、専門医、摂食機能療法専門歯科医師)
日本摂食嚥下リハビリテーション学会(認定士、評議員)
日本臨床栄養代謝学会(認定歯科医)
日本障害者歯科学会
【抄録(Abstract)】
当分野では、学生や臨床研修歯科医師を対象に、摂食嚥下障害患者の歯科訪問診療に同行させる臨床実習を実施していた。近年は、感染対策等のため歯科訪問診療に同行できる人数が制限されたため、オンライン診療用のICT(情報通信技術)を用いて訪問先と大学を繋ぎ、画像と音声を通して訪問診療の様子を見学させる実習を開始している。最近の歯学教育モデル・コア・カリキュラムや歯科医師国家試験出題基準によると、老年歯科医学や摂食嚥下リハビリテーションに関連する領域は、項目が増えるのみでなく、重点的に充実を図ることが明記されている。この領域は、教科書を読むだけでは理解しづらい学習内容が含まれ、患者や家族と直接話すなどの臨床的な経験が知識の定着に役立つと考える。ICTを用いたオンライン診療見学の利点は、参加者の移動時間がないため高いタイムパフォーマンスを有することである。一方で、オンラインではなく実際の診療を見て学びたかったという意見もあった。ICTは、訪問診療実習を実施していない大学の学生に対する基礎教育やリカレント教育に組み込むことも可能であるが、それぞれの教育プログラムの対象者や到達目標に応じてうまく活用することが望ましいと考える。また、本学の臨床研修プログラムは、昨年度から歯科訪問診療に関する研修が必修となった。地域での歯科医師の活躍や多職種連携をみて学ぶことで、幅広い領域で活躍できる歯科医師の育成を目指している。
「XR(クロスリアリティ)」は、「VR(Virtual Reality: 仮想現実)」、「AR(Augmented Reality: 拡張現実)」などの先端技術の総称で、エンターテインメント領域にとどまらず、ビジネス、医療、スポーツなど多様な領域での活用が進んでいる。VRは専用のゴーグルを装着することで全方位の映像を見ることができ、仮想のデジタル空間を現実のように体験することができる。学生の中には自宅でVR映画を楽しんでいる、という者もいた。当分野では摂食嚥下リハの授業の一貫として、学生を対象にVR学習を実施した。教材は歯科訪問診療の場面で、歯科医師もしくは家族の視点を学生が選択することで、自らが訪問診療に立会っているかのような臨場感のある現場を楽しみながら学習することができた。座学が中心の歯学教育にVRやAR教材を取り入れることは、学生が興味や関心を持つきっかけとなり、学習意欲の向上にもつながる。さまざまなシチュエーションを再現した教材を作成すれば、大学間の教育の標準化にも役立つ。新しい学びの形である体験型教育は、主体性の育成にも繋がり、教育の質向上も期待される。さまざまな可能性を秘めたXRの活用について、当分野での取り組みを紹介しながら考えたい。
当分野では、学生や臨床研修歯科医師を対象に、摂食嚥下障害患者の歯科訪問診療に同行させる臨床実習を実施していた。近年は、感染対策等のため歯科訪問診療に同行できる人数が制限されたため、オンライン診療用のICT(情報通信技術)を用いて訪問先と大学を繋ぎ、画像と音声を通して訪問診療の様子を見学させる実習を開始している。最近の歯学教育モデル・コア・カリキュラムや歯科医師国家試験出題基準によると、老年歯科医学や摂食嚥下リハビリテーションに関連する領域は、項目が増えるのみでなく、重点的に充実を図ることが明記されている。この領域は、教科書を読むだけでは理解しづらい学習内容が含まれ、患者や家族と直接話すなどの臨床的な経験が知識の定着に役立つと考える。ICTを用いたオンライン診療見学の利点は、参加者の移動時間がないため高いタイムパフォーマンスを有することである。一方で、オンラインではなく実際の診療を見て学びたかったという意見もあった。ICTは、訪問診療実習を実施していない大学の学生に対する基礎教育やリカレント教育に組み込むことも可能であるが、それぞれの教育プログラムの対象者や到達目標に応じてうまく活用することが望ましいと考える。また、本学の臨床研修プログラムは、昨年度から歯科訪問診療に関する研修が必修となった。地域での歯科医師の活躍や多職種連携をみて学ぶことで、幅広い領域で活躍できる歯科医師の育成を目指している。
「XR(クロスリアリティ)」は、「VR(Virtual Reality: 仮想現実)」、「AR(Augmented Reality: 拡張現実)」などの先端技術の総称で、エンターテインメント領域にとどまらず、ビジネス、医療、スポーツなど多様な領域での活用が進んでいる。VRは専用のゴーグルを装着することで全方位の映像を見ることができ、仮想のデジタル空間を現実のように体験することができる。学生の中には自宅でVR映画を楽しんでいる、という者もいた。当分野では摂食嚥下リハの授業の一貫として、学生を対象にVR学習を実施した。教材は歯科訪問診療の場面で、歯科医師もしくは家族の視点を学生が選択することで、自らが訪問診療に立会っているかのような臨場感のある現場を楽しみながら学習することができた。座学が中心の歯学教育にVRやAR教材を取り入れることは、学生が興味や関心を持つきっかけとなり、学習意欲の向上にもつながる。さまざまなシチュエーションを再現した教材を作成すれば、大学間の教育の標準化にも役立つ。新しい学びの形である体験型教育は、主体性の育成にも繋がり、教育の質向上も期待される。さまざまな可能性を秘めたXRの活用について、当分野での取り組みを紹介しながら考えたい。