一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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シンポジウム12
地域におけるオーラルフレイル対策と歯科衛生士の関わり

2024年6月30日(日) 13:10 〜 15:10 第3会場 (中ホール)

座長:須田 牧夫(医療法人社団横浜みらい会 横浜南仲通歯科)、渡邉 理沙(医療法人 静心会 桶狭間病院 藤田こころケアセンター 歯科)

企画:歯科衛生士関連委員会

[SY12-3] 北海道における通いの場を活用した歯科衛生士の活動事例

○末永 智美1,2 (1. 一般社団法人北海道歯科衛生士会、2. 北海道医療大学在宅歯科診療所)

【略歴】
2005年 北海道ハイテクノロジー専門学校 歯科衛生士学科 卒業
2005年 北海道北広島市 なかじま歯科診療室 勤務
2011年 社団法人北海道歯科衛生士会 勤務 北海道委託事業担当
2012年 北海道医療大学病院 勤務 歯科訪問診療担当
2019年 北海道医療大学在宅歯科診療所・北海道医療大学病院 兼任(現在に至る)

2021年 北海道医療大学大学院歯学研究科 歯学専攻博士課程 修了

2011年 社団法人北海道歯科衛生士会 理事
2017年 一般社団法人北海道歯科衛生士会 副会長
2023年 一般社団法人北海道歯科衛生士会 会長(現在に至る)
【抄録(Abstract)】
 令和5年版高齢社会白書において,我が国の総人口に占める65歳以上の人口割合(高齢化率)は29.0%であり,令和52(2070)年には2.6人に1人が65歳以上,4人に1人が75歳以上になると報告されている。今後ますます増加する高齢者が要介護状態に至ることを予防し,住み慣れた地域で自分らしい暮らしができるよう,地域包括ケアシステムの構築をはじめ,様々な施策や事業が展開されている。令和6年度の介護報酬改定においても,運動・栄養・口腔の一体的アプローチについて多く明記されており,フレイル対策・オーラルフレイル対策は,近年特に力を入れている部分ではないだろうか。フレイルの入り口は「社会との関わり」であるとされている。地域における「通いの場」の存在は,社会性の維持のみならず,様々な専門職も関わりながら心身の健康へのアプローチができる重要な場であると考える。
 北海道は広大な土地に恵まれる一方,地域による人口や医療資源の偏りも多く,地域の「通いの場」においても,市町村・各自治体だけでは専門職が十分に確保できていない課題がある。北海道歯科衛生士会は9つの支部があり(札幌,旭川,小樽,苫小牧,釧路,函館,オホーツク,室蘭,十勝),地域のニーズに合わせて対応できるよう人材育成をするとともに,必要に応じて介護予防教室等の市町村事業に歯科衛生士を派遣できるよう連携・協力体制の整備に努めている。
 札幌市では介護予防の拠点として市内53か所に設置した「介護予防センター」を中心として,介護予防に資する住民主体の介護予防活動の充実に取り組んでいる。住民主体の介護予防活動に対する専門職の派遣は平成29年度(2017年度)にリハビリテーション専門職から開始し,平成30年度(2018年度)より歯科衛生士及び栄養士の派遣が追加されることとなった。口腔の事業については本会が札幌市から受託し,現在も継続して事業展開を行っている。令和5年度(2023年度)は,1,200名超の地域住民を対象に介護予防教室を実施した。8項目の質問に回答するオーラルフレイルのセルフチェックにおいては,約6割がオーラルフレイルの可能性「あり」もしくは「高い」に該当していた。オーラルフレイルは身体的フレイルよりも先に生じるとされており,地域の介護予防・フレイル予防において,オーラルフレイルへの対応は重要な視点のひとつである。各専門職と協働するとともに,口腔の専門家として,歯科専門職の活躍はより一層求められていることを実感している。
 本シンポジウムでは,北海道歯科衛生士会および本会支部が市町村と連携し,地域の実情に合わせて実施している「通いの場」での取り組みについて,また,オーラルフレイルの現状,今後の課題等について報告する。歯科衛生士が地域で活躍するきっかけの一つになれば幸いである。