[SY2-1] 脳機能の障害と共に生きる人の支援のために脳を知る
![](https://confit-sfs.atlas.jp/customer/gero35/SY2-01.png)
平成15年 北海道大学歯学部卒業
平成15年 東京都老人医療センター 歯科・口腔外科 臨床研修医
平成17年 東京歯科大学オーラルメディシン・口腔外科学講座 入局
平成20年 東京都健康長寿医療センター研究所 協力研究員
平成23年 学位取得、博士(歯学)東京歯科大学
平成24年 東京都豊島区口腔保健センターあぜりあ歯科診療所勤務、東京都健康長寿医療センター研究所 非常勤研究員、東京歯科大学オーラルメディシン・口腔外科学講座 非常勤講師
平成27年 東京都健康長寿医療センター研究所 研究員
令和4年 北海道大学非常勤講師
【学会】
日本老年歯科医学会 認定医 摂食機能療法専門歯科医師
日本老年医学会 TNT-Geri・高齢者医療研修会修了 高齢者栄養療法認定医
日本老年精神医学会 多職種協働委員会
日本認知症学会 社会制度ワーキンググループほか
【抄録(Abstract)】
内閣府による高齢社会白書において、国民生活基礎調査をもとに要介護状態になった原因が示されている。平成29年版白書まで脳血管疾患が1位であったが、平成30年版白書から認知症が1位になった。経年的にみると、疾患別の病態、治療や後遺障害への対応方法の発展に影響されたことが示唆される。いずれにしても認知症や脳血管障害などの何らかの脳機能の障害がある状態の高齢者は、老年歯科医学会のターゲットゾーンど真ん中である。
脳機能の障害があっても、その人なりの人生を送る権利は当然ある。ところが地域における医療介護連携の中では、歯や口腔に関する困りごとが見落とされがちで、歯科口腔領域の医療ニーズが充足されていない場面は少なくない。なんらかの脳機能の障害がある人にとって歯科医療を含む社会とのつながりを失い、口腔の諸問題が放置されることは、会話や快適な食生活などその人らしい生活を送る上でのQOLを損なう要因になる。しかも諸兄は、歯科医療従事者が脳機能の障害を十分に理解していないこと自体が、彼らへの合理的配慮の不足をまねき、医学的最善利益の享受をはばむ障壁になることも実感しているだろう。歯科医療は、“ゆりかごから墓場まで”生活を守る医療でなければならない。
脳機能障害と共に生きる人は、神経ネットワークの障害の中で様々な困難とともにその人なりの人生を歩んでいる。口腔の健康を通じて彼らの生活を守るために、歯科医療従事者は、口腔だけにアプローチをしていたのでは不十分であろう。症状の背景にある脳の機能がどのような状態か、どんな心理社会学的背景があるかを推し量り、そのうえですこしでも快適に生きるための改善の糸口に関する適切な知識をもって、状況に見合った支援を提案することが必要である。
医療現象学ではデータで示される医学的な診断名を「disease」、病を得た生活による本人の経験を「illness」と呼ぶ。知識なき行為は暴力であり、行為なき知識は空虚であるのだから、人を対象とした臨床医学に携わる我々は、diseaseとillnessどちらの理解も不可欠である。現代医学が目指してきたdiseaseの理解は、幾多の基礎研究から成り立っている。Diseaseの知識を持って、目の前にいる脳機能の障害と共に生きる人の、障害された側面と保存された側面の抽出をしたうえで、工夫を提案し、その人の周囲の環境との交渉を手伝いたい。
本シンポジウムでは基礎研究の知見から、明日の臨床へのヒントを頂こう。
内閣府による高齢社会白書において、国民生活基礎調査をもとに要介護状態になった原因が示されている。平成29年版白書まで脳血管疾患が1位であったが、平成30年版白書から認知症が1位になった。経年的にみると、疾患別の病態、治療や後遺障害への対応方法の発展に影響されたことが示唆される。いずれにしても認知症や脳血管障害などの何らかの脳機能の障害がある状態の高齢者は、老年歯科医学会のターゲットゾーンど真ん中である。
脳機能の障害があっても、その人なりの人生を送る権利は当然ある。ところが地域における医療介護連携の中では、歯や口腔に関する困りごとが見落とされがちで、歯科口腔領域の医療ニーズが充足されていない場面は少なくない。なんらかの脳機能の障害がある人にとって歯科医療を含む社会とのつながりを失い、口腔の諸問題が放置されることは、会話や快適な食生活などその人らしい生活を送る上でのQOLを損なう要因になる。しかも諸兄は、歯科医療従事者が脳機能の障害を十分に理解していないこと自体が、彼らへの合理的配慮の不足をまねき、医学的最善利益の享受をはばむ障壁になることも実感しているだろう。歯科医療は、“ゆりかごから墓場まで”生活を守る医療でなければならない。
脳機能障害と共に生きる人は、神経ネットワークの障害の中で様々な困難とともにその人なりの人生を歩んでいる。口腔の健康を通じて彼らの生活を守るために、歯科医療従事者は、口腔だけにアプローチをしていたのでは不十分であろう。症状の背景にある脳の機能がどのような状態か、どんな心理社会学的背景があるかを推し量り、そのうえですこしでも快適に生きるための改善の糸口に関する適切な知識をもって、状況に見合った支援を提案することが必要である。
医療現象学ではデータで示される医学的な診断名を「disease」、病を得た生活による本人の経験を「illness」と呼ぶ。知識なき行為は暴力であり、行為なき知識は空虚であるのだから、人を対象とした臨床医学に携わる我々は、diseaseとillnessどちらの理解も不可欠である。現代医学が目指してきたdiseaseの理解は、幾多の基礎研究から成り立っている。Diseaseの知識を持って、目の前にいる脳機能の障害と共に生きる人の、障害された側面と保存された側面の抽出をしたうえで、工夫を提案し、その人の周囲の環境との交渉を手伝いたい。
本シンポジウムでは基礎研究の知見から、明日の臨床へのヒントを頂こう。